就労継続支援A型事業所における課題と対策:最新動向を解説

先日、厚生労働省から、令和6年3月から7月までにハローワークが解雇届によって把握した障害者の解雇者数が4,884人であることが発表されました。

そのうち4,279人が就労継続支援A型事業所の利用者であることが明らかになり、これに対する支援策が注目されています。

本記事では、解雇者数の状況、背景となる課題、そして福祉と雇用の両面からの対策について解説します。

解雇者数の状況

令和6年3月から7月に、就労継続支援A型事業所から4,279名が解雇されました。

そのうち936名が再就職を果たし、2,073名がB型事業所への移行が予定されています。これにより、全体の約7割が次の支援先を確保しています。

しかし、約30%の方が依然として求職中であり、進路が未定な状況です。このような方々への社会的支援が引き続き求められています。

解雇の理由としては、事業所の経営不安定性が大きく関わっており、自治体やハローワークが再就職支援や福祉サービスへのスムーズな移行に取り組んでいます。

解雇の原因:報酬改定の影響を含む経営課題

解雇者数の増加の背景には、以下のような経営課題があります。

1. 生産活動収支の赤字

就労継続支援A型事業所の約50.7%(3,715事業所のうち1,882事業所)が、生産活動収益が利用者に支払う賃金総額を下回る状態にあります。

こうした事業所では運営が困難となり、結果的に利用者の解雇や事業所の廃止に至るケースが増加しています。

2. 令和6年度の報酬改定の影響

報酬改定により、スコア方式による評価基準が見直されました。評価項目には「労働時間」「生産活動収支」「利用者支援」が含まれており、基準を満たすための取り組みが不十分な事業所にとっては厳しい環境となっています。

また、経営改善計画を提出しない事業所には減点措置が適用されることも、事業運営を圧迫する一因となっています。

3. 人員不足と運営負担

適切な人員配置が求められる中で、人手不足や資金不足が事業運営の大きな障害となっています。スコア方式の導入に伴う運営負担も、事業所の安定性を損なう要因となっていると考えられます。

福祉の面からの対策

事業所廃止時には、利用者が引き続き適切な福祉サービスを利用できるよう、都道府県に対し、以下のことについて周知徹底するよう依頼されております。

〇利用者への支援

・継続的なサービス利用の希望者への便宜提供の事業者責務の徹底、廃止届を受理する際の留意点、廃止日以降もサービス提供を希望する利用者の取扱い等(平成29年事務連絡)の再周知(令和6年4月)

・利用者への継続的なサービス確保に向けた、指定権者と支給決定権者の更なる連携を通じた支援、都道府県労働局・ハローワークとの情報共有等の強化

○ A型事業所の経営に関する支援

・工賃向上計画支援等事業等により、都道府県を通じ、A型事業所の経営改善・商品開発等への支援を実施

雇用の面からの対策

解雇された利用者に対し、ハローワークが中心となって次のような雇用支援を実施しています。

・離職予定の障害者を適切にハローワークでの支援につなげるため、地方自治体との情報共有や連携した再就職支援の実施

・離職を余儀なくされる障害者に対して、個々の障害特性を踏まえたきめ細かな専門的・個別的な職業相談・職業紹介の実施

・一般就労に移行できる就労能力があると思われる障害者に対して、本人の意向も踏まえつつ、一般就労への移行を実現するために、能力や希望にあった条件の求人との適切なマッチング

・離職予定の障害者の意向を踏まえた事業所訪問等によるハローワークの利用方法、雇用保険の手続き及び各種支援策等に関する説明会や出張相談

・円滑な受給資格決定に向けた雇用保険の集団受付

・就労継続支援A型事業所の離職者向けの企業見学会、就職面接会の開催

まとめ

就労継続支援A型事業所では、解雇者増加の背景にある経営課題を解消するため、福祉と雇用の両面からの対策が進められています。

今後、解雇者を減少させるためには、事業所の経営安定化と利用者支援を両立させることが求められます。事業所運営や利用者の就労環境が安心できるものとなるよう、引き続き関係機関による支援体制の強化が重要です。

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