
今回は、モデル就業規則第25条のモデル条文とその付属解説を紹介し、その他留意点について解説していきます。
☆モデル就業規則
(産前産後の休業)
第25条 6週間(多胎妊娠の場合は14週間)以内に出産予定の女性労働者から請求があったときは、休業させる。
2 産後8週間を経過していない女性労働者は、就業させない。
3 前項の規定にかかわらず、産後6週間を経過した女性労働者から請求があった場合は、その者について医師が支障ないと認めた業務に就かせることがある。
付属解説【第25条 産前産後の休業】
1 6週間(多胎妊娠の場合は14週間)以内に出産予定の女性労働者が休業を請求した場合には、その者を就業させてはいけません(労基法第65条第1項)。
2 産後8週間を経過しない女性労働者を就業させてはいけません。
ただし、産後6週間を経過した女性労働者から請求があったときは、医師が支障がないと認めた業務には就かせることができます(労基法第65条第2項)。
また、妊娠4か月以上であれば流産・死産の場合も産後休業を与える必要があります。
3 産前産後の休業を請求し、又は取得したことを理由として解雇その他不利益な取扱いをしてはいけません(均等法第9条第3項)。
☆実際の運用における留意点
上記のモデル条文および付属解説に記載された事項以外にも、実際の運用において押さえておくべき重要なポイントを以下に解説します。
1 対象者の範囲
産前産後休業の権利はすべての職種、雇用形態の労働者に適用されます。正社員だけでなく、派遣労働者やアルバイト・パート職員も対象です。
2 制度の適用要件
産前産後休業制度は、就業規則に記載がなくても、労働者が申請することで産前産後休業を取得する権利が発生します。
3 妊娠4か月以上の特例
妊娠4か月以上の場合、早産、流産、死産、妊娠中絶であっても産前産後休業の対象になります。
4 賃金の取り扱い
産前産後休業中の賃金については、法律上の支払い義務はありません。無給または有給とするかは就業規則で自由に定めることができますが、明確に規定しておくことが重要です。
なお、労働者が健康保険の被保険者であり要件を満たす場合、休業中に健康保険から出産手当金が支給されます(標準報酬月額の2/3相当)。また、出産時には健康保険から出産育児一時金も支給されます。
5 産前休業期間の計算
産前休業期間は、出産予定日を基準としてさかのぼって計算します。
6 出産日と産前休業の関係
出産日は産前休業期間に含まれます。そのため、出産予定日より出産が遅れた場合、産前休業が6週間以上になることがあります。逆に、出産が予定日より早まった場合、6週間未満となる場合があります。
まとめ
産前産後休業は、妊娠・出産を経験する労働者の権利を守るために定められた重要な制度です。
事業主としては、労働基準法や男女雇用機会均等法の規定を遵守することはもちろん、就業規則への明記や適切な運用を心がけることが求められます。労働者の安心と安全を確保する職場環境づくりにお役立てください。
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