
初めて会社から給料を受け取ったとき、「思ったより手取りが少ない!」と感じたことはありませんか? その理由の一つが、「天引きされる税金や社会保険料」です。
給与が振り込まれる前に、会社があらかじめこれらの金額を差し引き、従業員に代わって税務署や役所に納付しているためです。
しかし、この仕組みは少し複雑で、よくわからないという方が多いでしょう。
この記事では、所得税の計算方法と、毎月どのようにして給料から天引きされているのかについて解説します。
これから社会に出る皆様が正しい知識を持ち、給料の仕組みを理解するきっかけになれば幸いです。
所得税とは?
所得税は、個人が1年間に得た所得(給与や賞与など)に対して課される税金です。
最終的な所得税額は、1月から12月までの年間所得をもとに計算されます。
ただし、実際には毎月の給与や賞与の支払い時に、所得税が「概算」で天引きされる仕組みになっています。
まずは所得税の基本的な計算方法を見ていきます。
<所得税の計算方法(6つのステップ)>
所得税は、以下の6つのステップで計算されます。
所得税の金額を算出する際、まず「課税所得」という金額を求め、それに税率をかけることが必要です。ここで重要なのは、「課税所得」は単純に「収入」と同じではないという点です。給与や賞与などの収入から、さまざまな控除を差し引いた金額が「課税所得」となります。
ステップ1:非課税収入を差し引く
給与の中で課税対象にならない部分(=非課税収入)をまず差し引きます。
代表的なものに通勤手当があります。通勤手当は一定の金額まで非課税とされており、これを差し引いた後の金額が「課税対象の収入」となります。
<計算式> 年間収入(給与 + 賞与 + 通勤手当など)- 非課税収入(例:通勤手当)
ステップ2:必要経費を差し引く(給与所得控除)
収入を得るために「必要とした経費(必要経費)」を差し引きます。ただし、サラリーマンの場合、個々の経費(例:スーツ代など)を実際に申告して差し引くわけではなく、「給与所得控除」という形で一律に計算された金額が控除されます。この給与所得控除は、収入の額に応じて法律で定められた方法で計算されます。
<計算式> 年間収入 - 給与所得控除 = 給与所得
ステップ3:所得控除を差し引く
所得控除とは、個々の生活状況や支出に応じて税負担を軽減するために設けられた仕組みです。従業員の方が年末に会社に申告して行われます。これを「年末調整」と言います。所得控除の主な控除項目は以下の通りです。
●社会保険料控除
健康保険料、厚生年金保険料、雇用保険料などの社会保険料は、すべて控除の対象となります。これらの保険料は給与から天引きされているため、実際の支払額に応じて控除されます。
●扶養控除・配偶者控除・基礎控除
扶養控除は、扶養家族(例:子どもや親など)がいる場合に適用される控除です。配偶者控除は、配偶者の収入が一定額以下の場合に適用されます。
また、基礎控除は、すべての納税者に一律で適用される控除です。
なお、入社時に扶養親族や配偶者の情報を申告しますが、年の途中で扶養親族の人数が変わったり(例:子どもの誕生や親を扶養に入れるなど)、配偶者の収入が変動した場合は、年末調整時に最新の情報を会社に報告する必要があります。
●生命保険料控除・地震保険料控除
生命保険や地震保険の保険料を支払っている場合、その支払額に応じて所得控除を受けることができます。適用を受けるには、年末調整時に保険会社が発行する「控除証明書」を会社に提出する必要があります。
<計算式> 給与所得 - 所得控除 = 課税所得
ステップ4:課税所得に税率をかける
課税所得に基づき、所得税額を計算します。所得税は、所得が高くなるほど税率が上がる仕組みになっています(累進課税制度)。また、各税率ごとに「控除額」が定められています。
<計算式> 課税所得 × 税率 - 控除額
ステップ5:住宅ローン控除を適用(該当者のみ)
住宅ローンを利用してマイホームを購入している場合、一定条件を満たすと「住宅借入金等特別控除」が適用され、年末時点の住宅ローン残額に応じて、所得税額から一定額が差し引かれます。
<計算式> 所得税額 - 住宅借入金等特別控除 = 差引所得税額
ステップ6:復興特別所得税を加算する
最後に、「復興特別所得税」を加算します。これは、東日本大震災からの復興財源を確保するために導入された税金で、所得税額に2.1%を上乗せして計算されます。
<計算式> 差引所得税額 × 102.1% = 最終的な所得税額
所得税の支払い方法
毎月の給与から天引きされる所得税とは?
所得税は、毎月の給与を受け取る際にあらかじめ「概算」で計算され、会社が給与から天引きして税務署に納めます。
この天引きの金額は、従業員が会社に事前に提出する「扶養控除等申告書」の情報をもとに、扶養親族の数や給与額を考慮して計算されます。
扶養親族が多ければその分、税負担が軽くなります。一方、申告書を提出していない場合は、天引きされる税額が多くなり、手取り額が減ることがあります。
賞与(ボーナス)の所得税はどう計算される?
ボーナス(賞与)の場合、前月の給与をもとに計算された税率を使って所得税が天引きされます。
※前月の給与がない場合には、国税庁が定めた特別な計算式を使います。給与とは別の仕組みですが、同じように税金は「概算」で計算されます。
年末調整で最終的な税額を確定
毎月天引きされている所得税は、あくまで概算の金額です。その年の1月から12月までの年間収入をもとに正しい税額を計算するために、会社が年末調整を行います。
このとき、以下の控除が反映されます。
「扶養控除・配偶者控除・基礎控除」、「保険料控除(社会保険料控除、生命保険料控除など)」、「住宅ローン控除(該当者のみ)」
もし、天引きされた所得税が多すぎた場合は還付(お金が戻る)され、足りなかった場合は追加徴収されます。
まとめ
以上、かなりややこしいですが、所得税は「給与や賞与から非課税収入や各種控除を差し引いて計算される税金」と覚えておいてください。
所得税の仕組みを理解しておくことで、給料明細を見る際の不安や疑問が解消されるはずです。また、控除の制度を正しく理解すれば、税負担を軽減することもできます。
社会人としてスタートを切る皆様にとって、こうした知識はきっと役立つと思います。
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