外国人労働者の「育成就労」制度とは?~出入国管理法改正のポイントを解説~

2024年6月、日本の労働環境における大きな転換点となる「育成就労」を柱とした出入国管理法の改正案が可決されました。本制度は、従来の技能実習制度の課題を解決し、外国人労働者の人材確保と育成を目指すものです。

本記事では、育成就労制度導入の背景と内容について分かりやすく解説します。

法改正の背景

一層深刻になる国内の労働力不足が背景にあります。日本の人口予測は以下のとおりです。

・年間100万人ペースで総人口が減少しており、2040年までに生産年齢人口が1200万人減少する見込み。

・2100年には人口の4割が高齢者になる見通し。

特に地方では、外国人材が重要な労働力となりつつあります。今後、厳しくなることが予想される国際的な人材獲得競争において、外国人材を確保することが日本経済、特に地方経済の存続に直結する課題となっております。

技能実習制度の課題

一方、外国人労働者を対象としたこれまでの技能実習制度は、以下のような課題が指摘されてきました。

●目的と実態の乖離

・制度目的は、人材育成を通じた技能移転による国際貢献されていたが、実態は、国内労働力を補うための仕組みとして機能していた。

・技能実習から特定技能への移行がスムーズに行えない職種が存在し、特定技能に移行できずに帰国せざるを得ない場合があった。

・職種が細分化され、実習生が従事できる業務範囲が限られていた。

・原則として、実習終了後に帰国が求められ、多くの外国人労働者が日本でのキャリアを続けられなかった。

●外国人から見た魅力の欠如

・長期間にわたって日本で働き、キャリアアップしていくイメージが描きにくく、キャリアアップの道筋が不明確となっていた。

・転籍が原則禁止で、柔軟な雇用が難しく、失踪問題の原因となる場合もあった。

・不適切な受入れ機関や高額な送出手数料などの問題がたびたび発生していた。

これらの問題は、失踪や不法就労などの課題を生み、日本社会全体の信頼を損なう原因ともなっていました。

新制度「育成就労」のポイント

育成就労制度は、技能実習制度の課題を踏まえ、以下のような特徴を持つ新たな外国人雇用制度となっております。

1 長期的な人材育成

・特定技能1号レベルの人材を育成することを目的に、原則3年間の就労期間を設ける。

・受入れ分野は特定技能と一致させ、業務範囲を拡大する。

・人手不足の状況を把握し、有識者の意見を基に受入れ数を適切に設定する。

2 外国人材に魅力ある制度

・特定技能への移行を見据えた道筋を強化する。

・前職に縛られない柔軟なキャリア形成を支援する。

・所管省庁がキャリア形成プランを策定していく。

・「やむを得ない事情がある場合」の転籍の範囲を拡大・明確化する。

・同一業務区分内で本人意向に基づく転籍を認める。

3 適正な運用と不正の防止

・受入れ機関や監理団体の要件を厳格化する。

・悪質な送出機関を排除し、送出手数料を透明化していく。

・外国人育成就労機構を新設し、特定技能外国人への支援機能を強化する。

4 地域への定着支援

日本語能力向上の支援や、地域協議会の設立により、外国人が地域に根付き共生できる環境を整備。

まとめ

この制度は、日本が国際社会で「選ばれる国」になるための基盤を築きます。労働者にとっての魅力を高め、適切な支援と環境整備を行うことで、外国人材の受入れを持続可能な形に進化させる狙いがあります。

育成就労制度は、労働力不足解消に留まらず、地方経済の活性化や国際的な日本の地位向上にも寄与することが期待されます。

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