R6年度介護報酬改定 ~認知症の対応力向上①~訪問系サービスにおける認知症専門ケア加算

認知症を抱える高齢者の増加が予測される中、認知症の方々の尊厳と能力を最大限に尊重しながら、良質で適切な保健医療および福祉サービスが途切れることなく提供される体制の整備が急務となっております。このため、認知症の方々やそのご家族が、安心して地域社会の中で日常生活を送ることができるよう、今回の報酬改定において包括的かつ継続的な取り組みが推進されることになりました。その取り組みについてご紹介いたします。

認知症の対応力向上

訪問系サービスにおける認知症専門ケア加算の見直し【訪問介護、訪問入浴介護★、定期巡回・随時対応型訪問介護看護、夜間対応型訪問介護】

訪問系サービスにおける認知症専門ケア加算について、認知症高齢者の重症化の緩和や日常生活自立度Ⅱの者に対して適切に認知症の専門的ケアを行うことを評価する観点から、利用者の受入れに関する要件を見直されました。

認知症専門ケア加算の見直しポイント

この改定では、訪問系サービスにおける認知症専門ケア加算が見直されます。特に、認知症高齢者の重症化を防ぎ、日常生活自立度Ⅱ以上の方に対して適切なケアを提供するための取り組みが強化されます。以下にポイントを確認しておきましょう。

認知症専門ケア加算(Ⅰ)の要件拡大

認知症高齢者の日常生活自立度Ⅱ以上の方を対象とし、利用者の受入れ要件を広げました。

認知症専門ケア加算(Ⅱ)の新要件追加

日常生活自立度Ⅲ以上の方の割合が、利用者の20%以上であることが要件に追加されました。

単位数

今回の改定では、サービスごとの単位数に変更はありません。以下はサービスごとの単位数の概要です。

介護サービス種別Ⅰの単位数Ⅱの単位数
訪問介護3単位/日4単位/日
訪問入浴介護3単位/日4単位/日
定期巡回・随時対応型訪問介護看護90単位/月120単位/月
夜間対応型訪問介護夜間対応型訪問介護費(Ⅰ)を算定する場合 3単位/日夜間対応型訪問介護費(Ⅰ)を算定する場合 4単位/日
夜間対応型訪問介護費(Ⅱ)を算定する場合 90単位/月夜間対応型訪問介護費(Ⅱ)を算定する場合 120単位/月

算定要件の詳細

認知症専門ケア加算(Ⅰ)

ア 対象者の要件: 認知症高齢者の日常生活自立度Ⅱ以上の方が利用者の半数以上であること。

イ 研修修了者の配置: 対象者の数に応じた研修修了者の配置が必要です。

日常生活自立度Ⅱ以上の対象者の人数研修修了者の配置人数
20人未満1以上
20人以上1に、対象者が19人を超えて10またはその端数を増すごとに1を加えた数以上

ウ 専門的ケアの実施: 認知症高齢者の日常生活自立度Ⅱ以上の者に対して、専門的な認知症ケアを実施すること

エ 会議の定期開催: 事業所内で認知症ケアに関する技術的指導や注意事項の会議を定期的に開催する必要があります。

<認知症専門ケア加算(Ⅱ)>

ア 認知症専門ケア加算(Ⅰ)のイ・エの要件を満たすこと

イ 認知症高齢者の日常生活自立度Ⅲ以上の者が利用者の100分の20以上

ウ 認知症高齢者の日常生活自立度Ⅲ以上の者に対して、専門的な認知症ケアを実施

エ 認知症介護指導者研修修了者を1名以上配置し、事業所全体の認知症ケアの指導等を実施

オ 介護職員、看護職員ごとの認知症ケアに関する研修計画を作成し、研修を実施又は実施を予定

まとめ

訪問系サービスにおける認知症専門ケア加算の見直しは、今後の認知症ケアにおいて重要な役割を果たすことになると思います。認知症の方々に質の高いケアを提供し、その生活を支えるための制度強化がますます求められています。

以下、これまでに公表されたQ&Aをご紹介します。

Q&A VOL.1

問 17 認知症専門ケア加算及び通所介護、地域密着型通所介護における認知症加算並びに(看護)小規模多機能型居宅介護における認知症加算(Ⅰ)・(Ⅱ)の算定要件について、「認知症介護に係る専門的な研修」や「認知症介護の指導に係る専門的な研修」のうち、認知症看護に係る適切な研修とは、どのようなものがあるか。

(答)

・ 現時点では、以下のいずれかの研修である。

① 日本看護協会認定看護師教育課程「認知症看護」の研修

② 日本看護協会が認定している看護系大学院の「老人看護」及び「精神看護」の専門看護師教育課程

③ 日本精神科看護協会が認定している「精神科認定看護師」

・ ただし、③については認定証が発行されている者に限る。

問 18 認知症高齢者の日常生活自立度の確認方法如何。

(答)

・ 認知症高齢者の日常生活自立度の決定に当たっては、医師の判定結果又は主治医意見書を用いて、居宅サービス計画又は各サービスの計画に記載することとなる。なお、複数の判定結果がある場合には、最も新しい判定を用いる。

・ 医師の判定が無い場合は、「要介護認定等の実施について」に基づき、認定調査員が記入した同通知中「2(4)認定調査員」に規定する「認定調査票」の「認定調査票(基本調査)」7の「認知症高齢者の日常生活自立度」欄の記載を用いるものとする。

・ これらについて、介護支援専門員はサービス担当者会議などを通じて、認知症高齢者の日常生活自立度も含めて情報を共有することとなる。

問 19 認知症介護に係る専門的な研修を修了した者を配置するとあるが、「配置」の考え方如何。常勤要件等はあるか。

(答)

・ 専門的な研修を修了した者の配置については、常勤等の条件は無いが、認知症チームケアや認知症介護に関する研修の実施など、本加算制度の要件を満たすためには事業所内での業務を実施する必要があることから、加算対象事業所の職員であることが必要である。

・ なお、本加算制度の対象となる事業所は、専門的な研修を修了した者の勤務する主たる事業所1か所のみである。

問 20 認知症専門ケア加算(Ⅱ)及び(看護)小規模多機能型居宅介護における認知症加算(Ⅰ)の認知症介護指導者は、研修修了者であれば管理者でもかまわないか。

(答)

認知症介護指導者研修修了者であり、適切に事業所全体の認知症ケアの実施等を行っている場合であれば、その者の職務や資格等については問わない。

問 21 認知症介護実践リーダー研修を修了していないが、都道府県等が当該研修修了者と同等の能力を有すると認めた者であって、認知症介護指導者養成研修を修了した者について、認知症専門ケア加算及び通所介護、地域密着型通所介護における認知症加算並びに(看護)小規模多機能型居宅介護における認知症加算(Ⅰ)・(Ⅱ)における認知症介護実践リーダー研修修了者としてみなすことはできないか。

(答)

・ 認知症介護指導者養成研修については認知症介護実践研修(認知症介護実践者研修及び認知症介護実践リーダー研修)の企画・立案に参加し、又は講師として従事することが予定されている者であることがその受講要件にあり、平成 20 年度までに行われたカリキュラムにおいては認知症介護実践リーダー研修の内容が全て含まれていたこと等の経過を踏まえ、認知症介護実践リーダー研修が未受講であっても当該研修を修了したものとみなすこととする。

・ 従って、認知症専門ケア加算(Ⅱ)及び(看護)小規模多機能型居宅介護における認知症加算(Ⅱ)については、加算対象となる者が 20 名未満の場合にあっては、平成 20 年度以前の認知症介護指導者養成研修を修了した者(認知症介護実践リーダー研修の未受講者)1 名の配置で算定できることとし、通所介護、地域密着型通所介護における認知症加算については、当該者を指定通所介護を行う時間帯を通じて1名の配置で算定できることとなる。

問 22 例えば、平成 18 年度より全国社会福祉協議会が認定し、日本介護福祉士会等が実施する「介護福祉士ファーストステップ研修」については、認知症介護実践リーダー研修相当として認められるか。

(答)

本加算制度の対象となる認知症介護実践リーダー研修については、自治体が実施又は指定する研修としており、研修カリキュラム、講師等を審査し、適当と判断された場合には認められる。

問 23 認知症介護実践リーダー研修修了者は、「痴呆介護研修事業の実施について」(平成 12 年9月5日老発第 623 号)及び「痴呆介護研修事業の円滑な運営について」(平成 12 年 10 月 25 日老計第 43 号)において規定する専門課程を修了した者も含むのか。

(答)

含むものとする。

問 24 認知症専門ケア加算及び通所介護、地域密着型通所介護における認知症加算並びに(看護)小規模多機能型居宅介護における認知症加算(Ⅰ)・(Ⅱ)における「技術的指導に係る会議」と、特定事業所加算やサービス提供体制強化加算における「事業所における従業者の技術指導を目的とした会議」が同時期に開催される場合であって、当該会議の検討内容の1つが、認知症ケアの技術的指導についての事項で、当該会議に登録ヘルパーを含めた全ての訪問介護員等や全ての従業者が参加した場合、両会議を開催したものと考えてよいのか。

(答)

貴見のとおりである。

問 26 認知症専門ケア加算(Ⅱ)及び(看護)小規模多機能型居宅介護における認知症加算(Ⅰ)を算定するためには、認知症専門ケア加算(Ⅰ)及び(看護)小規模多機能型居宅介護における認知症加算(Ⅱ)の算定要件の一つである認知症介護実践リーダー研修修了者に加えて、認知症介護指導者養成研修修了者又は認知症看護に係る適切な研修修了者を別に配置する必要があるのか。

(答)

必要ない。例えば加算の対象者が 20 名未満の場合、

・ 認知症介護実践リーダー研修と認知症介護指導者養成研修の両方を修了した者

・ 認知症看護に係る適切な研修を修了した者

のいずれかが1名配置されていれば、算定することができる。

Q&A VOL.3

認知症専門ケア加算、認知症加算

問4 「認知症介護実践リーダー研修の研修対象者として、介護保険施設・事業所等においてサービスを利用者に直接提供する介護職員として、介護福祉士資格を取得した日から起算して 10 年以上、かつ、1,800 日以上の実務経験を有する者あるいはそれと同等以上の能力を有する者であると実施主体の長が認めた者については、令和9年3月 31 日までの間は、本文の規定に関わらず研修対象者」とあるが、「それと同等以上の能力を有する者であると実施主体の長が認めた者」とは具体的にどのような者なのか。

(答)

同等以上の能力を有する者として、例えば、訪問介護事業所において介護福祉士として7年以上サービスを利用者に直接提供するとともに、そのうちの3年以上、サービス提供責任者としても従事する者を研修対象者として認めていただくことは差し支えない。

Q&A VOL.4

認知症専門ケア加算①訪問系サービスにおける対象者の割合の計算方法

問1 訪問系サービスにおける認知症専門ケア加算の算定要件について、加算(Ⅰ)にあっては認知症高齢者の日常生活自立度Ⅱ以上の割合が 50%以上、加算(Ⅱ)にあっては認知症高齢者の日常生活自立度Ⅲ以上の割合が 20%以上であることが求められているが、算定方法如何。

(答)

・ 認知症専門ケア加算の算定要件である認知症高齢者の日常生活自立度Ⅱ又はⅢ以上の割合については、前3月間のうち、いずれかの月の利用者数で算定することとし、利用者数は利用実人員数又は利用延人員数を用いる。

・ なお、計算に当たって、

- (介護予防)訪問入浴介護の場合は、本加算は要支援者(要介護者)に関しても利

用者数に含めること

- 定期巡回・随時対応型訪問介護看護費(Ⅰ)・(Ⅱ)(包括報酬)、夜間対応型訪問介

護費(Ⅱ)(包括報酬)の場合は、利用実人員数(当該月に報酬を算定する利用者)を

用いる(利用延人員数は用いない)こと

に留意すること。

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