令和6年度介護報酬改定 介護老人保健施設における認知症短期集中リハビリテーション実施加算の見直し

今回は介護老人保健施設(老健)における「認知症短期集中リハビリテーション実施加算」の見直しについてお伝えします。

介護老人保健施設とは

介護老人保健施設とは、入所者が自分の持っている能力を最大限に活かし、自立した日常生活を送れるようにサポートする施設です。

施設では、個々の「施設サービス計画」に基づき、看護や医学的管理のもと、介護や機能訓練、さらには必要な医療や日常生活の世話が提供されます。

また、入院治療後に家庭や社会へ復帰するために、リハビリテーションを提供する場としても重要な役割を担っています。特に医学的な管理と看護を中心としたサービスが提供されており、ただ日常のケアを行うだけでなく、社会復帰に向けた支援が行われている施設です。

介護老人保健施設リハビリテーションにおける現状と課題

介護老人保健施設(老健)におけるリハビリテーションは、入所直後に集中的に実施されることが多く、その結果、利用者のADL(活動的日常生活動作)が大きく改善することが確認されています。

そのうち、認知症の方に対するリハビリでは、日常生活を送る具体的な場面を想定しながら、個々の認知機能を最大限に引き出すことが重要視されて行われてきております。

しかし、現在の認知症リハビリに関しては、学習療法や記憶訓練に偏重しているとの指摘があり、利用者がより生活に積極的に関与し、廃用症候群(身体機能の低下)を予防するための訓練が不足しているとの意見が出されておりました。

このため、利用者が生活する自宅の環境を事前に評価し、実際の生活状況を踏まえたリハビリを介護施設がより積極的に提供できるようにするため、現行の「認知症短期集中リハビリテーション実施加算」について、評価の見直しが進められることとなりました。

認知症短期集中リハビリテーション実施加算の見直し

単位数

<現行>

認知症短期集中リハビリテーション実施加算:240単位/日

※週に3日を限度として算定。算定期間は入所後3ヶ月以内。

<改定後>

認知症短期集中リハビリテーション実施加算(Ⅰ):240単位/日(新設)

認知症短期集中リハビリテーション実施加算(Ⅱ):120単位/日(変更)

今回の改定では、従来の240単位/日が2つの段階に分けられました。「加算(Ⅰ)」では、従来通り240単位が維持されますが、新たに設けられた「加算(Ⅱ)」では、120単位/日に減少しています。

この違いは、施設のリハビリ体制や利用者に対するケアの質に応じた設定です。

算定要件について

<認知症短期集中リハビリテーション実施加算(Ⅰ)>(新設)

こちらは、新たに設けられた加算で、以下の要件を満たす介護老人保健施設が対象です。

(1)リハビリテーションを担当する理学療法士、作業療法士、または言語聴覚士が適切に配置されていること。

(2)施設の入所者数が、リハビリ担当スタッフ(理学療法士、作業療法士、言語聴覚士)の数に対して適切なものであること。

(3)入所者が退所後に生活する自宅や社会福祉施設を訪問し、訪問時に把握した生活環境を踏まえたリハビリテーション計画を作成していること。

この加算(Ⅰ)は、より専門的で包括的なリハビリを提供する施設に対して適用されます。退所後の生活環境を見据えた支援が求められており、利用者が自立した生活を送れるようにするための大きな一歩です。

<認知症短期集中リハビリテーション実施加算(Ⅱ)>(変更)

従来の加算要件を維持しつつ、120単位/日に変更されました。この加算は、「加算(Ⅰ)」の(1)と(2)は同じ要件であり、リハビリスタッフの適切な配置と利用者数との適切なバランスが必要です。

ただし、(Ⅰ)のような退所後の環境への具体的な訪問が求められない点が異なります。

最後に

今回の改定は、認知症の方々に対するリハビリテーションの質を高め、より個々の状況に即したケアを提供することを目的としています。特に「加算(Ⅰ)」の新設は、施設のケア水準を一段階引き上げる役割を担い、利用者の在宅復帰や社会参加を促進することが期待されています。

介護老人保健施設で提供されるリハビリテーションの質が向上し、認知症の方々が安心して生活できる環境が整備されていくことが重要です。

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