
医療と介護の連携は、認知症の方や単身高齢者、そして医療ニーズの高い中重度の高齢者が住み慣れた地域で尊厳を保ちながら生活できるために、非常に重要な取り組みです。
今回の介護報酬改定では、在宅医療のニーズに対応するためのいくつかの見直しが行われました。まずは第1弾として以下の1~6までの主要な改定内容について解説します。
1 専門性の高い訪問看護師による評価の新設【訪問看護・看護小規模多機能型居宅介護】
医療ニーズの高い利用者が増加している背景から、質の高い訪問看護の提供が求められています。これに応じて、専門性の高い看護師による計画的な管理を評価する「専門管理加算」が新設されました。新設された加算は250単位で、訪問看護や介護予防訪問看護において導入されます。
専門管理加算 250単位(新設)
2 在宅薬学管理の推進【居宅療養管理指導】
薬剤師が行う居宅療養管理指導についても見直しが行われました。特に在宅で医療用麻薬を使った持続注射療法や、中心静脈栄養法を行っている患者への薬学的管理を評価するための新たな加算が設けられました。
医療用麻薬持続注射療法加算:250単位(新設)
在宅中心静脈栄養法加算: 150単位(新設)
これにより、在宅での適切な薬物療法の提供がより充実し、医療ニーズに応じた対応が進められることが期待されます。
3 短期入所療養介護における総合医学管理加算の見直し【短期入所療養介護】
介護老人保健施設が提供する短期入所療養介護について、医療ニーズの高い利用者の受入れをさらに促進するための見直しが行われました。これにより、計画的に行う治療管理がより柔軟に評価され、算定日数も7日から10日へと延長されました。
4 療養通所介護における短期利用の推進【療養通所介護】
医療ニーズを持つ中重度者の利用が容易になるよう、療養通所介護には新たに短期利用型の区分が追加されました。これにより、緊急時や登録者以外の患者も、必要に応じて利用できる体制が強化されます。
短期利用療養通所介護費:1,335単位/日(新設)
5 重度者への安定したサービス提供体制の評価【療養通所介護】
重度の利用者に対する安定的なサービス提供を評価するために、「重度者ケア体制加算」が新設されました。手厚い人員体制や管理体制を持つ事業者が、重度利用者へのサービスを安定的に提供するための支援が強化されます。
重度者ケア体制加算:150単位/月(新設)
6 看護小規模多機能型居宅介護の柔軟なサービス利用の促進【看護小規模多機能型居宅介護】
看護小規模多機能型居宅介護では、介護度によらず利用者ごとの利用頻度が幅広く、新規利用に至らないことがあることを踏まえ、利用者の柔軟なニーズに応じてサービスを利用しやすくするための見直しが行われました。
また、緊急時の宿泊サービスを提供する体制を評価するための加算が新設され、利用者の安心感が高まる体制が整備されました。
ア 当該登録者へのサービス提供回数が過少な場合は、基本報酬を減算する。
(現行)
看護小規模多機能型居宅介護費(1月につき)
算定月における提供回数について、登録者(短期利用居宅介護費を算定する者を除く)1人当たり平均回数が週4回に満たない場合は、所定単位数の100分の70に相当する単位数を算定する。
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(改正後)
算定月における提供回数について、週平均1回に満たない場合、又は登録者(短期利用居宅介護費を算定する者を除く)1人当たり平均回数が週4回に満たない場合は、所定単位数の100分の70に相当する単位数を算定する。
イ 緊急時訪問看護加算について、緊急時の宿泊サービスを必要に応じて提供する体制を評価する要件を追加する見直しを行う。
(現行)
緊急時訪問看護加算 574単位
利用者の同意を得て、利用者又はその家族等に対して当該基準により24時間連絡できる体制にあって、かつ、計画的に訪問することとなっていない緊急時における訪問を必要に応じて行う体制にある場合(訪問看護サービスを行う場合に限る)には、1月につき所定単位数を加算する。
↓
(改正後)
緊急時対応加算 774単位
利用者の同意を得て、利用者又はその家族等に対して当該基準により24時間連絡できる体制にあって、かつ、計画的に訪問することとなっていない緊急時における訪問及び計画的に宿泊することとなっていない緊急時における宿泊を必要に応じて行う体制にある場合(訪問看護サービスを行う場合に限る)には、1月につき所定単位数を加算する。
上記サービスに係るこれまで公表されたQ&Aをご紹介します。
VOL.1
○ 専門管理加算について
問 38 専門管理加算のイの場合において求める看護師の「緩和ケア、褥瘡ケア又は人工肛門及び人工膀胱ケアに係る専門の研修」には、具体的にはそれぞれどのようなものがあるか。
(答)
現時点では以下の研修が該当する。
① 褥瘡ケアについては、日本看護協会の認定看護師教育課程「皮膚・排泄ケア」
② 緩和ケアについては、
・ 日本看護協会の認定看護師教育課程「緩和ケア※」、「乳がん看護」、「がん放射線療
法看護」及び「がん薬物療法看護※」
・ 日本看護協会が認定している看護系大学院の「がん看護」の専門看護師教育課程
③ 人工肛門及び人工膀胱ケアについては、日本看護協会の認定看護師教育課程「皮膚・排泄ケア」
※ 平成 30 年度の認定看護師制度改正前の教育内容による研修を含む。
例えば「緩和ケア」は、従前の「緩和ケア」「がん性疼痛看護」も該当し、「がん薬物療法看護」は従前の「がん化学療法看護」も当該研修に該当する。
問 39 専門管理加算のロの場合において求める看護師の特定行為研修には、具体的にはどのようなものがあるか。
(答)
現時点では、特定行為に係る看護師の研修制度により厚生労働大臣が指定する指定研
修機関において行われる以下の研修が該当する。
① 「呼吸器(長期呼吸療法に係るもの)関連」、「ろう孔管理関連」、「創傷管理関連」及び「栄養及び水分管理に係る薬剤投与関連」のいずれかの区分の研修
② 「在宅・慢性期領域パッケージ研修」
問 40 専門管理加算を算定する利用者について、専門性の高い看護師による訪問と他の看護師等による訪問を組み合わせて指定訪問看護を実施してよいか。
(答)
よい。ただし、専門管理加算を算定する月に、専門性の高い看護師が1回以上指定訪問看護を実施していること。
問 41 問7専門管理加算について、例えば、褥瘡ケアに係る専門の研修を受けた看護師と、特定行為研修を修了した看護師が、同一月に同一利用者に対して、褥瘡ケアに係る管理と特定行為に係る管理をそれぞれ実施した場合であっても、月1回に限り算定するのか。
(答)
そのとおり。イ又はロのいずれかを月1回に限り算定すること。
【療養通所介護】
○ 重度者ケア体制加算について
問 52 重度者ケア体制加算において求める看護師の「保健師助産師看護師法(昭和二十三年法律第二百三号)第三十七条の二第二項第五号に規定する指定研修機関において行われる研修等」とは、どのようなものか。
(答)
現時点では、以下の研修が該当する。
・ 特定行為に係る看護師の研修制度により厚生労働大臣が指定する指定研修機関において行われる研修
・ 日本看護協会の認定看護師教育課程、日本看護協会が認定している看護系大学院の専門看護師教育課程
※平成 30 年度の認定看護師制度改正前の教育内容による研修を含む。
VOL.2
【短期入所療養介護】
○ 総合医学管理加算について
問 17 総合医学管理加算について、介護老人保健施設における短期入所療養介護の利用中の利用者が治療管理が必要な状態になり、治療管理を行った場合には算定可能か。
(答)算定可能。
今回の改定は、特に在宅で医療ニーズが高い方へのサービス強化に重きを置いています。医療と介護の連携をさらに促進し、高齢者やその家族が安心して生活できる地域包括ケアシステムの構築に向けた一歩と言えるだと思われます。
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