派遣社員を選んではいけない?~「特定行為」の禁止とは~

「派遣」という働き方は、派遣元会社と派遣社員が雇用契約を結び、派遣社員が派遣先会社の指揮命令を受けて働くという仕組みです。

そのため、派遣社員を受け入れる派遣先の会社としては、「どんな人が来るのだろう?」と、気になるだろうと思います。

男性か女性か?年齢はどれぐらいか?経歴やスキルはどの程度か?

一緒に働く相手ですから、事前に知っておきたいと思うのも自然なことです。

しかし、労働者派遣法では、派遣先会社が派遣契約の際に派遣されてくる社員を事前に選考し、特定することを原則として禁止しています。

これを「特定行為の禁止」といい、以下のような行為が該当します。

・事前面接の要請や実施

・履歴書や職務経歴書の提出の要求

・年齢・性別の指定

・適性検査や筆記試験の実施

・業務に直接関係しない個人情報の聴取

それでは、なぜこのような制限があるのでしょうか?

派遣労働では、雇用主である派遣元会社が人選や評価を行い、その業務に適した人材を派遣先会社に送り出します。派遣先会社には雇用契約上の立場がなく、当然、選考権もありません。

もし、派遣先会社が実質的な選考を行えば、それは直接雇用と変わらない状態となり、派遣という制度の趣旨を逸脱することになります。

加えて、派遣社員の就業機会が不当に制限され、差別や選別の温床となるおそれもあるのです。

もちろん、派遣先会社が「この業務にはこうしたスキルや経験が必要だ」と希望条件を伝えることは認められています。ただし、その際にも年齢・性別など個人属性にかかわる条件を指定することはできません。

では、派遣先会社が制限に反して、これら特定行為を行った場合はどうなるのでしょうか。

現行法では罰則は設けられておらず、国(労働局など)による行政指導の対象となる可能性があるにとどまります。

とはいえ、この特定行為の禁止は、実務上は非常に重く受け止められている重要なルールですので、十分な注意が必要です。

「特定行為の禁止」には例外として、「紹介予定派遣」の制度があります。

紹介予定派遣とは、派遣先と派遣社員の双方が納得したうえで雇用に至る仕組みのことで、派遣社員が派遣先会社で直接雇用されることを前提としております。この場合に限り、事前の面接や書類選考が認められています。

このように、派遣社員の人選については制度趣旨を踏まえた慎重な対応が求められます。派遣制度の正しい理解が、公正な職場環境づくりに不可欠となります。

                    ↓

     社会保険労務士・行政書士事務所 ワンストップサービス北海道