
今回は、モデル就業規則第26条のモデル条文とその付属解説を紹介し、その他留意点について解説していきます。
☆モデル就業規則
(母性健康管理の措置)
第26条 妊娠中又は出産後1年を経過しない女性労働者から、所定労働時間内に、母 子保健法に基づく保健指導又は健康診査を受けるために申出があったときは、次の範囲で時間内通院を認める。
① 産前の場合
妊娠23週まで・・・・・・・・4週に1回
妊娠24週から35週まで ・・・2週に1回
妊娠36週から出産まで ・・・・1週に1回
ただし、医師又は助産師(以下「医師等」という。)がこれと異なる指示をしたときには、その指示により必要な時間 ② 産後(1年以内)の場合 医師等の指示により必要な時間
2 妊娠中又は出産後1年を経過しない女性労働者から、保健指導又は健康診査に基づき勤務時間等について医師等の指導を受けた旨申出があった場合、次の措置を講ずる。
① 妊娠中の通勤緩和措置として、通勤時の混雑を避けるよう指導された場合は、原則として 時間の勤務時間の短縮又は 時間以内の時差出勤を認める。
② 妊娠中の休憩時間について指導された場合は、適宜休憩時間の延長や休憩の回数を増やす。
③ 妊娠中又は出産後の女性労働者が、その症状等に関して指導された場合は、医師等の指導事項を遵守するための作業の軽減や勤務時間の短縮、休業等の措置をとる。
付属解説【第26条 母性健康管理の措置】
1 事業主は、雇用する女性労働者が母子保健法(昭和40年法律第141号)の規定による保健指導又は健康診査を受けるために必要な時間を確保することができるようにしなければなりません(均等法第12条)。
また、事業主は、雇用する女性労働者が保健指導又は健康診査に基づく指導事項を守ることができるようにするため、勤務時間の変更、勤務の軽減等必要な措置を講じなければなりません(均等法第13条)。
なお、流産・死産後1年以内であれば妊娠の週数を問わず母性健康管理措置の対象となります。
2 母性健康管理措置を求め、又は措置を受けたことを理由として解雇その他不利益な取扱いをしてはいけません(均等法第9条第3項)。
☆実際の運用における留意点
上記のモデル条文および付属解説に記載されている事項以外にも、実務上押さえておくべき重要なポイントがあります。これらを理解し、適正な労働環境の整備にお役立てください。
1 時間内通院の取り扱いについて
事業主は、女性従業員が希望する日に通院のための時間を原則として認めなければなりません。たとえ休日に通院が可能な場合であっても、事業主が通院日を休日に変更するよう強制することはできません。この点についての認識を徹底する必要があります。
2 通院時間中の賃金支払いについて
保健指導や健康診査のために通院する時間について、賃金を支払うか否かは事業主の裁量に委ねられています。
ただし、有給とするか無給とするかは、明確に就業規則に定めておくことが重要です。これにより、従業員とのトラブルを未然に防ぐことができます。
3 通院時間の範囲
「通院に要する時間」には、診察そのものにかかる時間だけでなく、交通機関の利用や移動に要する時間も含まれます。この点を考慮して、柔軟に対応することが求められます。
4 軽易業務への転換義務
妊娠中の女性が請求した場合、事業主はその従業員を軽易な業務に転換させなければなりません。
ただし、事業主に新たな軽易業務を創設して提供する義務までは課されていないため、現行の業務内容の中で調整を行うことが現実的です。
5 妊産婦が従事可能な業務の制限
妊娠中および産後1年以内の女性(妊産婦)については、重量物を取り扱う業務や有害業務に就かせてはならないとされています。
さらに、妊産婦以外の女性についても、妊娠・出産機能に有害な業務には就かせてはならない旨が定められています。この制限事項は、妊娠・出産の有無に関わらず適用されるため注意が必要です。
6 時間外労働、休日労働、深夜労働の制限
妊産婦が請求した場合、事業主はその従業員に時間外労働、休日労働、深夜労働を課すことができません。これらの規制は、妊産婦の健康保護の観点から厳格に運用する必要があります。
7 管理監督者の場合の特例
妊産婦が管理監督者である場合、請求があれば深夜労働は免除されます。
しかし、時間外労働や休日労働については、一般の妊産婦と同じような制限が適用されるわけではありません。
つまり、管理監督者としての業務内容によっては、時間外や休日の勤務を行うことが求められる場合があります。このため、妊産婦が管理監督者である場合は、勤務状況や健康状態を十分に配慮した対応が必要です。
まとめ
これらのポイントを理解し、妊産婦への適切な配慮を行うことは、従業員の健康と働きやすい環境の確保に直結します。
また、就業規則の整備や運用の見直しを通じて、事業主としての法的責任を果たすことが重要です。職場全体での理解を深めながら、働く人々が安心して業務に取り組める環境を整えていきましょう。
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