キャリアアップ助成金とは?~正社員化コースが拡充されました!~

今回は「キャリアアップ助成金」についてご紹介します。

キャリアアップ助成金は、非正規雇用労働者(有期雇用労働者、短時間労働者、派遣労働者など)のキャリアアップを促進するために、企業が正社員化や処遇改善に取り組んだ際に支給される助成金です。企業が有期雇用労働者などを正社員に転換したり、待遇を改善したりすることを奨励することで、働く人たちがより安定した職に就けることを目的としています。

キャリアアップ助成金にはいくつかの種類がありますが、今回は「正社員化コース」に焦点を当てて詳しく見ていきます。

キャリアアップ助成金の種類

キャリアアップ助成金には、主に2つの支援内容があります。それは「正社員化」と「処遇改善」です。それぞれの内容は以下の通りです。

1 正社員化

正社員化コース:有期雇用労働者等を正社員化することで支給されます。

障害者正社員化コース:障害のある有期雇用労働者を正規雇用に転換した場合に支給されます。

2 処遇改善

賃金規定等改定コース:有期雇用労働者の基本給を3%以上増額するために賃金規定を改定した場合に支給されます。

賃金規定等共通化コース:有期雇用労働者と正規雇用労働者に共通の賃金規定を新たに定めて適用した場合に支給されます。

賞与・退職金制度導入コース:有期雇用労働者を対象に賞与や退職金制度を導入し、実際に支給した場合に支給されます。

社会保険適用時処遇改善コース:新たに社会保険を適用し、賃金増額や労働時間延長を実施した場合に支給されます(令和8年3月31日までの限定措置)。

※なお、助成金を受けるためには、あらかじめ「キャリアアップ計画」の提出が必要です。これは、今後のキャリアアップ施策について計画的に取り組むための書類で、実施日の前日までに労働局に提出しなければなりません。

キャリアアップ計画書は、3年以上5年以内の計画期間を定めた上で、「キャリアアップ管理者」を決め、有期雇用労働者等を含む事業所における「全ての労働者の代表」から意見を聴く必要があることにご注意ください。

正社員化コースについて

正社員化コースは、有期雇用労働者や無期雇用労働者を正社員に転換した場合に支給される助成金です。

具体的には、企業が就業規則や労働協約に基づき、労働者を正社員に転換した際に助成されます。

【支給額(中小企業の場合)】

有期雇用労働者を正社員に転換:80万円(40万円×2期)

無期雇用労働者を正社員に転換:40万円(20万円×2期)

←正規雇用が継続していた場合、2期目の支給申請ができるようになりました!中小企業の場合、現行では、1期(6か月)で 57万円助成だったところ、拡充後は2期(12か月)で80万円助成となりました!(1期あたり40万円)

【加算額】

●派遣労働者を正社員として直接雇用:28万5千円

●母子家庭や父子家庭の親を対象とした場合:9万5千円(有期)/4万7千500円(無期)

●人材開発支援助成金の訓練を修了後に正社員化:9万5千円(有期)/4万7千500円(無期)

●新たに正社員転換制度を規定して転換した場合:20万円

←「新たに正社員転換制度」の導入に取り組む事業主に対する加算措置が新設されました!

●多様な正社員制度(勤務地限定・職務限定・短時間正社員いずれか1つ以上の制度)を新たに規定し、当該雇用区分に転換等した場合(1事業所当たり1回のみ)

有期雇用労働者、無期雇用労働者ともに40万円

←多様な正社員(勤務地限定・職務限定・短時間正社員)制度規定に関する加算額を増額されました!

正規雇用労働者の定義&対象となる労働者の要件

支給額や加算の枠が新設、拡充された正社員化コースですが、次に、「正規雇用労働者」の定義や助成金申請に必要な条件について、見ていきましょう。

【正規雇用労働者の定義】

「正規雇用労働者」とは、同じ事業所内で他の正社員に適用されている就業規則が適用される労働者を指します。加えて、賞与や退職金の制度が適用されており、昇給もあることが条件です。正社員としての安定した待遇を享受できることが基準となっています。

【対象となる労働者の要件】

助成金を受け取るためには、以下の通り、ある程度の期間、非正規雇用者としての働き方が続いた労働者が対象になります。

・賃金の額や計算方法が「正規雇用労働者とは異なる雇用区分の就業規則」に基づいていること。

・その状態で6か月以上継続して雇用されていること。

←対象となる有期雇用労働者の雇用期間が現行の「6か月以上3年以内」から「6か月以上」に緩和されております。

そのほか、

・正社員としての雇用を約束されていないこと。

・事業主の親族でないこと。

・正社員化日から定年までの期間が1年以上であること。

などの要件があることにも注意が必要です。

支給申請の流れと期間

支給申請は、正社員化後に行う必要がありますが、以下のように2段階に分かれています。

【第1期】

正社員化した労働者に対して、正規雇用労働者としての賃金を6か月分支給した翌日から2か月以内に申請を行います。この段階では、正社員化がしっかり行われたかを確認する書類の提出が必要です。

【第2期】

次に、12か月分の賃金を支給した翌日から2か月以内に第2期の申請を行います。この期間に支給対象の労働者が継続して正社員として働いていることが条件です。

【支給申請に必要な書類】

支給申請を行う際には、いくつかの書類を揃える必要があります。以下に必要な書類をリストアップしましたので、確認しておきましょう。

<第1期の必要書類>

・キャリアアップ助成金支給申請書

・正社員化コース内訳

・正社員化コース対象労働者の詳細

・支給要件確認申立書

・支払方法・受取人住所届

<添付書類>

また、次の添付書類も必要となります。

・管轄労働局長の認定を受けた「キャリアアップ計画」の写し

・正社員化前後の就業規則や労働協約の写し

・正社員化前後の雇用契約書や労働条件通知書の写し

・正社員化前後の賃金台帳および賃金増額に関する計算書

・正社員化前後の出勤簿やタイムカードの写し

<第2期の必要書類>

第2期の申請には、以下の書類が必要です。

・第2期分の賃金台帳の写し

・第2期分の出勤簿やタイムカードの写し

・必要に応じて、賃金規定の改定があった場合はその写し

・その他の状況に応じた書類

労働者が母子家庭や父子家庭の親であったり、人材開発支援助成金の訓練を修了していた場合には、さらに追加の書類が必要です。

また、派遣労働者を直接雇用する場合や、特定紹介予定派遣労働者を雇用する場合にも、それぞれ対応した契約書や関連書類が求められます。

キャリアアップ助成金の申請には多くの書類が必要ですが、適切に準備することで企業にとって大きな支援となります。正社員化を進める際には、ぜひこの制度を活用してみてください。助成金をうまく活用することで、企業も働く人もともに成長できるチャンスが広がります。

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