R6障害福祉サービス報酬改定 ~一人暮らしに向けた支援強化~ グループホーム(共同生活援助)

令和6年度の障害福祉サービス報酬改定では、一人暮らしを希望する障害者に対する支援がさらに強化されます。この改定では、グループホームに入居している間だけでなく、退去後も継続的に支援を行うことが検討されています。これにより、一人暮らしを望む障害者が、地域で安心して自立した生活を送れるよう、支援の充実が図られる予定です。

現状と課題

近年、グループホームの利用者数は増加傾向にありますが、利用者の中には、アパートなどでの一人暮らしを希望する人が少なくないことが国の調査でも明らかになっております。

そのため、障害者総合支援法において、一人暮らしを希望する利用者に対する支援や、退去後の生活定着を支えるための相談支援がグループホームの重要な支援内容の一つに含まれるようになりました。

ただし、現行のグループホーム制度には、退去する利用者に対する自立生活支援加算があるものの、グループホーム事業者が退去後の一人暮らしの定着を支援するための見守りや相談支援を実施できる期間は限られています。

これに対し、報酬体系の見直しや、入居中及び退居後の定着支援の継続的な提供を可能にする仕組みの必要性が指摘され、また、一人暮らしを支援する新たなグループホームのサービス類型についても検討するべきとの意見が出されました。

そのため、以下の方向性で検討が進められ、見直しが行われました。

検討の方向性

・一人暮らし等に向けた希望を持つ利用者を支援するため、現行の自立生活支援加算を拡充し、入居中における一人暮らし等に向けた支援や、居住支援法人との連携等を評価する。

・ グループホームの入居前から一人暮らし等をするための支援を希望する者に対する仕組みとして、共同生活住居(移行支援住居)で一人暮らし等に向けた一定の期間における集中的な支援を評価する。

・ グループホームの退居後の一定期間における相談支援や、新住居における在宅の支援チームへの引継ぎ等の支援を評価する。

・ 移行支援住居の入居中又は退居後の一定期間におけるピアサポートの専門性を評価する加算を創設する。

以下、見直し内容についてご紹介します。

まず、グループホーム入居中の支援メニューです。

1 グループホーム入居中における一人暮らし等に向けた支援の充実

≪自立生活支援加算の拡充≫

[現 行]

自立生活支援加算 500単位/回

[見直し後]

イ 自立生活支援加算(Ⅰ) 1,000単位/月【新設

※個別支援計画を見直して一人暮らしに向けた支援を行った場合、最長6か月間加算されます。また、居住支援法人や居住支援協議会と月1回以上情報を共有すると35単位、さらに在宅療養の説明や指導を行い、自立支援協議会などに報告した場合は500単位がそれぞれ追加で加算されます。

ロ 自立生活支援加算(Ⅱ) 500単位/回

※ 現行の算定要件と同一(日中サービス支援型のみ)

月500単位の加算(入居中に2回、退居後に1回)

・退居前に退居後の生活に関する相談援助や居住予定の居宅訪問を行い、利用者や家族に相談援助を行うか、退居後30日以内に居宅を訪問して相談援助を行った場合が対象

ハ 自立生活支援加算(Ⅲ)【新設】

⑴ 利用期間が3年以内の場合 80単位/日

⑵ 利用期間が3年を超えて4年以内の場合 72単位/日

⑶ 利用期間が4年を超えて5年以内の場合 56単位/日

⑷ 利用期間が5年を超える場合 40単位/日

※以下の要件を満たす事業所で、利用者が一人暮らしを希望し、可能性がある場合に、退居に向けた支援を行うと1日ごとに所定の単位数が加算されます。

(移行支援住居の設置)

一人暮らしを目指すための住居(移行支援住居)を少なくとも1つ保有し、定員は2~7名です。

(有資格サービス管理責任者の配置)

事業所に置くべきサービス管理責任者に加え、移行支援住居に入居する利用者を支援するため、社会福祉士または精神保健福祉士の資格を持つサービス管理責任者を7:1以上の割合で配置する必要があります。

(個別支援計画の作成)

移行支援住居への入居を希望する利用者の入居時に会議を開催し、利用者の意向を反映した個別支援計画を作成する必要があります。

(住居確保と同行支援)

入居者の住居確保や外出時の同行支援、関係機関等との連絡調整を行う必要があります。

(情報共有)

居住支援法人や居住支援協議会と定期的に情報を共有する必要があります。

(定期報告)

居住支援法人と共同で在宅療養に関する説明を行い、その内容を自立支援協議会などに定期的に報告する必要があります。

退去後の支援メニューです。

2 グループホーム退居後における支援の評価

≪退居後共同生活援助サービス費、退居後外部サービス利用型共同生活援助サービス費【新設】≫  2,000単位/月

※以下の要件を満たす場合に算定されます。

(対象者)

退居時に「自立生活支援加算(Ⅰ)」または「自立生活支援加算(Ⅲ)」を算定していた利用者が対象です。

(支援期間)

退居後、3ヶ月間(市町村が引き続き支援が必要と認めた場合は6ヶ月間)を対象に、1ヶ月ごとに所定の単位数が加算されます。

(支援内容)

個別支援計画の作成:一人暮らし等への移行に向けた会議を開催し、利用者の意向を反映した個別支援計画を作成すること。

週1回以上の居宅訪問:利用者の自宅を訪問し、心身の状況や生活環境を把握し、必要な情報提供、助言、相談、または医療機関などとの連絡調整などの支援を行うこと。

最後に、ピアサポートへの評価です。入居中にも退去後にも行われます。

3 入居中、退去後のピアサポートへの評価

≪ピアサポート実施加算、退居後ピアサポート実施加算【新設】≫  100単位/月

※以下の要件を満たす事業所で、障害者または過去に障害者であったと都道府県知事に認められた者で、障害者ピアサポート研修修了者が利用者に対し、彼らの経験に基づいた相談援助を行った場合に適用されます。

・自立生活支援加算(Ⅲ)又は退居後(外部サービス利用型)共同生活援助サービス費を算定していること。

・障害者ピアサポート研修修了者を従業者として2名以上(うち1名は障害者等)配置していること。

・ピアサポート研修修了者により、当該事業所の従業者に対し、障害者に対する配慮等に関する研修が年1回以上行われていること。

まとめ

今回の報酬改定では、一人暮らしを希望する障害者への支援が大幅に強化されています。グループホーム入居中だけでなく、退居後も継続的な支援が提供されることで、地域で安心して自立生活を送れる仕組みが整えられています。特に、自立生活支援加算の拡充や退居後のサポート、ピアサポート加算の導入などが評価され、支援がより包括的になっている点が印象的です。これにより、利用者が自立に向けた具体的なステップを踏みやすくなり、持続的なサポートが期待されます。

以下、これまでに公表されたQ&Aを抜粋してご紹介します。

【自立生活支援加算】Q&A

Q&A VOL.1

問 38 共同生活援助事業所を退居し単身等での生活を行っていた者が、やむを得ない事由(病気等)により単身等での生活を止め、共同生活援助事業所に戻った後、再度単身等での生活を希望する場合、一度当該加算を算定した利用者に対し、再度加算を算定することは可能か。

(答)

自立生活支援加算(Ⅰ)については、当該指定共同生活援助事業所において、個別支援計画を見直したことにより一人暮らし等の移行に向けた専門的な支援を行ったことを評価するものであることから、当該事業所に入居している期間について1回に限り算定することが可能である。ただし、退居した後、再度指定共同生活援助を利用した場合において、当該加算の算定要件を満たした場合には算定可能である。

(自立生活支援加算(Ⅰ)②)

問 39 最終的に退居に至らなかった場合も算定可能か。

(答)

貴見のとおり。

(自立生活支援加算(Ⅰ)③)

問 40 「計画の見直しを行った日の属する月から起算して6月以内」に限り、1月に1回を限度として算定できるとあるが、1月あたりの支援回数や内容に要件はあるか。

(答)

1月あたりの支援回数や内容を一律に規定しているものではないが、一人暮らし等に向けて6月間で計画的に支援を行う趣旨であることから、個別支援計画に基づき、適切な支援をされたい。

(自立生活支援加算(Ⅰ)④)

問 41 自立生活支援加算(Ⅰ)について、一人の対象者につき同一事業所において一度までの算定となるか。また、当該加算を算定できる期間は、変更後の計画を交付した月を起算月として、算定しない月も含めて6月間のみとすることでよいか。

(答)

貴見のとおり。

(自立生活支援加算(Ⅰ)⑤)

問 42 自立生活支援加算(Ⅰ)の算定期間について、「サービス管理責任者が共同生活援助計画又は外部サービス型共同生活援助計画の変更に係る会議を開催し・・・」とあるが、会議はオンラインや電話での会議も想定しているのか。それとも対面で行う会議のみを想定しているのか。

(答)

個別支援会議については、原則として利用者が同席した上で行わなければならないものである。ただし、当該利用者の病状により、会議への同席が極めて困難な場合等、やむを得ない場合については、例外的にテレビ電話装置の活用等、同席以外の方法により、希望する生活及びサービスに対する意向等を改めて確認することで差し支えない。

(自立生活支援加算(Ⅲ)①)

問 43 移行支援住居に自立生活支援加算の対象とならない利用者が入居してもよいか。また、その場合、通常の指定共同生活住居利用者と同様に基本報酬等は算定可能か。

(答)

移行支援住居については、共同生活住居のうち、入居前から利用者の希望等を確認した上で、一定期間の支援を実施することにより、当該住居の退居後に一人暮らし等へ移行することを目的としたものであり、当該加算の対象とならない利用者が入居することはできず、自立生活支援加算を除く基本報酬等も算定できない。

 (自立生活支援加算(Ⅲ)②)

問 44 移行支援住居のサービス管理責任者が、社会福祉士又は精神保健福士の資格を有する必要があるか。サービス管理責任者の他に同資格を有する者を配置することによって代替することは可能か。

(答)

有資格のサービス管理責任者を配置する必要がある。このため、サービス管理責任者の他に同資格を有する者の配置により代替することはできない。

 (自立生活支援加算(Ⅲ)③)

問 45 移行支援住居に配置するサービス管理責任者の兼務は、どの範囲で可能か。(同事業所の管理者・サービス管理責任者・世話人・夜勤職員等、別事業所の管理者・サービス管理責任者・生活支援員等)

(答)

サービス管理責任者(同事業所・別事業所ともに)のみ、兼務不可である。

 (自立生活支援加算(Ⅲ)④)

問 46 自立生活支援加算(Ⅲ)で、「定員以内であれば、サテライト型住居を含む複数の住居を1つの移行支援住居とすることができる」とあるが、この場合、改めて移行支援住居としての指定を受ける必要があるのか。それとも、サテライト型住居の指定を受けたまま移行支援住居としての

支援がされるのか。

(答)

サテライト型住居を含む複数の住居について、改めて移行支援住居として登録する届出を行う必要がある。

(自立生活支援加算(Ⅲ)⑤)

問 47 指定共同生活援助に常勤換算で「0.5」配置されたサービス管理責任者が、残りの常勤換算「0.5」分で移行支援住居に入居する利用者に対する支援にサービス管理責任者として従事する場合、算定できるか。

(答)

算定できない。

Q&A VOL.3

(自立生活支援加算(Ⅰ))

問7 移行支援住居から他の共同生活住居に移行した者において、自立生活支援加算(Ⅰ)を移行した日の属する月から算定することは可能か。

(答)

自立生活支援加算(Ⅰ)は、すでに共同生活住居に入居している利用者において、本人が居宅における単身等での生活を希望し、かつ、単身等での生活が可能であると見込まれる利用者である場合に、退居に向けて個別支援計画を見直し、支援を行うことにより算定できるものであることから、対象とならない。

 (自立生活支援加算(Ⅰ)、自立生活支援加算(Ⅲ))

問8 自立生活支援加算(Ⅰ)と自立生活支援加算(Ⅲ)を同一利用者に対して同時に算定することは可能か。

(答)

自立生活支援加算(Ⅰ)は、すでに共同生活住居に入居している利用者において、本人が居宅における単身等での生活を希望し、かつ、単身等での生活が可能であると見込まれる利用者である場合に、退居に向けて個別支援計画を見直し、支援を行うことにより算定できるものである。一方で、自立生活支援加算(Ⅲ)は移行支援住居の利用を希望する利用者に対して、移行支援住居への入居前に個別支援計画を作成することを要件とするものであることから、これらを同時に算定することできない。

【退居後共同生活援助サービス・退居後外部サービス利用型共同生活援助サービス費】Q&A

Q&A VOL.1

(退居後共同生活援助サービス・退居後外部サービス利用型共同生活援助サービス費①)

問 34 退居後共同生活援助サービスと、自立生活援助又は地域定着支援とを併給する場合、同一法人の自立生活援助事業所又は地域定着支援事業所であっても算定可能か。

(答)

貴見のとおり。ただし、当該利用者に対して退居後(外部サービス利用型)共同生活援助サービスを実施する従業者と自立生活援助又は地域定着支援を実施する従業者とを同一人物が兼務している場合は、算定できない。

(退居後共同生活援助サービス・退居後外部サービス利用型共同生活援助サービス費②)

問 35 退居後共同生活援助サービスについては、留意事項通知において「おおむね週1回以上の支援を行う」とされているが、算定自体は月2回以上の訪問等による支援を行った場合に算定可となっているので、実際はその程度の頻度での支援でも差し支えないか。

(答)

月途中から利用を開始する場合や、サービス終了に向けて訪問頻度を調整する場合等を考慮し、基本報酬の算定においては月2回以上の訪問等による支援を行うことを要件としているが、事業所側の事情により、安易に訪問頻度を減らすことはあってはならない。

Q&A VOL.3

(退居後共同生活援助サービス・退居後外部サービス利用型共同生活援助サービス費①)

問9 退居後に他の共同生活援助を行う住居に入居する場合においても、当該報酬を算定することは可能か。

(答)

退居後(外部サービス利用型)共同生活援助サービス費は、共同生活住居から一人暮らし等に移行した者について、居宅における自立した日常生活の定着に必要な援助を提供することを趣旨としているため、支給決定の対象とならない。

 (退居後共同生活援助サービス・退居後外部サービス利用型共同生活援助サービス費②)

問 10 利用者の一人暮らし等への移行に当たって開催する会議の参加者や規模の要件はあるか。

(答)

個別支援計画を作成するための会議を開催することで足りる。

Q&A VOL.5

(退居後共同生活援助サービス・退居後外部サービス利用型共同生活援助サービス)

問2 退居後(外部サービス利用型)共同生活援助サービスの利用者について、指定共同生活援助事業所等において算定要件を満たす各種加算は算定できるのか。

(答)

退居後ピアサポート実施加算及び福祉・介護職員等処遇改善加算のみが算定可能であり、共同生活住居における人員配置体制や提供される支援内容を評価する各種加算は算定することはできない。