R6障害福祉サービス報酬改定 ~支援の実態に応じた報酬の見直し~ グループホーム

グループホームについては、近年、営利企業の参入が多く、支援の質の低下が叫ばれているところです。

一方、グループホームは、生活環境や支援内容を個別化しやすいことから、強度行動障害を有する者の受け入れについて大きく期待されている面もあります。

今回、グループホームについて、強度行動障害者の受け入れのための環境整備のほか、支援の質の低下を防ぎ、障害特性やサービス提供にあった報酬体系の見直しの必要性について議論がなされ、報酬が大きく見直されることになりました。

まずは、議論のベースとなったグループホームの現状と課題についてご紹介します。

現状と課題

初期アセスメントの評価の重要性

強度行動障害を有する方をグループホームで受け入れる際、特に初期段階では手厚い支援が必要となる。

そのため、最初のアセスメントをしっかりと行い、障害特性に応じた支援計画を立てることが求められることから、ここの評価を適切に行うことが必要である。

営利法人の増加と支援の質の懸念

最近、多くの営利法人がグループホームを開設しており、その中で障害福祉サービスの経験や実績が乏しい法人が少なくない。その結果、障害者の特性や程度を踏まえた適切な支援が提供されていないという懸念が広がっており、今後、グループホームの支援の質が低下するリスクがある。

支援内容のバラツキと報酬体系の問題

グループホームでは、支援内容に関して明確な基準がないため、事業所ごとに支援の内容や質に大きなバラツキがある。また、世話人の員数や利用者の障害程度区分に応じて報酬が算定される結果、支援の量や質にかかわらず報酬が同額であるため、質の低い支援でも利益を得やすい構造的な問題がある。

報酬体系の不公平さ

世話人の員数や利用者の障害程度区分に応じて報酬が算定される結果、事業所の週所定労働時間が短い場合、少ないサービスで高額の報酬を得られる可能性がある。

居宅介護サービスと報酬の二重報酬の懸念

グループホームの利用者は居宅介護サービスを受けることができる一方で、居宅介護サービスの利用時間に応じてグループホームの報酬が減額されていないことから、グループホームと居宅介護サービスを同じ法人が提供している場合、二重に報酬を得ている可能性がある。

日中支援加算の見直し

利用者が外部の日中サービスを利用できないときに、グループホームの従業者が日中の支援を行う場合があるが、その場合、日中支援加算が適用される。

しかし、現行制度では支援を行った日が月に3日以上ある場合にのみ加算が適用され、3日目以降の日数のみが対象となることから、支援に見合う評価になるよう見直しが必要である。

検討の方向性

・強度行動障害を有する方の受け入れ体制を強化するため、利用者の状況や環境の変化に対応する初期アセスメントを重視し、評価を行う。

・障害支援区分ごとの基本報酬については、重度障害者の受け入れを含め、支援内容や事業所の経営実態を踏まえて見直しを行う。

・世話人の配置基準に基づいた基本報酬区分を改定し、実際のサービス提供時間に応じて加算する報酬体系へ見直す。

・日中支援加算(Ⅱ)については、介護サービス包括型および外部サービス利用型において、支援が提供された初日から評価を行う一方、日中サービス支援型は廃止する。

見直しの内容

強度行動障害を有する者の受入体制の強化

グループホームでの強度行動障害を有する方々の受け入れ体制を強化するため、見直された加算制度は以下の通りです。これにより、重度障害者への支援がさらに手厚くなることが期待されています。

・重度障害者支援加算(Ⅰ)の拡充と新設

重度障害者支援加算(Ⅰ)では、受け入れ時の評価が拡充されました。加算額は360単位/日となり、行動関連項目で18点以上の利用者を受け入れた場合、条件を満たせばさらに+150単位/日の加算が適用されます。

加えて、新たに初期段階の評価加算が導入されました。この加算は500単位/日で、最大180日間適用されます。行動関連項目が18点以上の利用者については、さらに+200単位/日の加算が追加される

・重度障害者支援加算(Ⅱ)の拡充と新設

重度障害者支援加算(Ⅱ)も、受け入れ時の加算が拡充されており、180単位/日が支給されます。行動関連項目で18点以上の利用者を受け入れた場合、条件を満たせば+150単位/日の加算が適用されます。

また、加算(Ⅰ)と同様に、初期段階での新しい加算制度が導入されています。この加算は400単位/日で、180日間を限度として適用されます。行動関連項目が18点以上の利用者の場合、さらに+200単位/日の加算が追加されます。

基本報酬区分の見直し等

障害支援区分ごとの基本報酬が見直され、特に重度障害者の受け入れに対応できるように調整されています。具体的には、世話人の配置基準に基づいて基本報酬区分が改定され、サービス提供時間の実態に応じた加算方式が導入されました。

介護サービス包括型の例(世話人の配置6:1以上)

【現 行】共同生活援助サービス費(Ⅲ)

区分6:583単位 区分5:467単位 区分4:387単位 区分3:298単位

区分2:209単位 区分1以下:170単位(単位/日)

【見直し後】

・共同生活援助サービス費(Ⅰ)

区分6:600単位 区分5:456単位 区分4:372単位 区分3:297単位

区分2:188単位 区分1以下:171単位(単位/日)

上記の報酬に加え、世話人や生活支援員の配置基準に応じて加算される新たな制度が、以下の通り設けられました。

新設された人員配置体制加算

特定従業者数換算方法に基づいて、利用者に対して一定以上の世話人を加配している事業所に対して適用されるものです。上記報酬に加え、この加算が適用されることで、手厚い人員体制を持つ事業所がより適切な評価を受けられるようになります。

・特定従業者数換算方法(週40時間で換算)で利用者の数に対して一定以上の世話人又は生活支援員が加配されている事業所に対して加算する。

【新 設】

・人員配置体制加算(Ⅰ)

区分4以上 83単位/日 区分3以下 77単位/日

*特定従業者数換算方法で12:1以上の世話人等を加配

・人員配置体制加算(Ⅱ)

区分4以上 33単位/日 区分3以下 31単位/日

*特定従業者数換算方法で30:1以上の世話人等を加配

日中支援加算の見直し

グループホームにおける日中支援加算が見直され、支援の実態に合わせた新たな評価方法が導入されました。この変更により、支援が提供された初日から加算が適用されるようになり、より適切に支援が評価される仕組みが整います。

【現 行】 支援の3日目から算定可

【見直し後】 支援の初日から算定可

ただし、この加算が適用されるのは、介護サービス包括型および外部サービス利用型のグループホームに限定されており、日中サービス支援型のグループホームは加算の対象外となります。

個人単位の居宅介護等の利用の特例的取扱い(※)

重度障害者の個人単位の居宅介護利用に関する特例措置は、グループホームで利用者の重度化が進む一方で、その対応が十分に進んでいない現状があるため、令和9年3月31日まで延長されることになりました。日中サービス支援型グループホームの創設があっても、現時点では重度化への対応が十分ではないことが理由です。

その上で、居宅介護等を8時間以上利用する場合については、所定単位数の100分の95に相当する単位数を算定することに見直されました。

(※)

グループホームでは、利用者への介護サービスは、生活支援員による介護か、外部の居宅介護事業所への委託によって提供され、原則として他の形態での介護サービスは禁止されているが、特定の重度障害者に対しては、経過措置として、生活支援員による介護に加えて、個人単位で居宅介護や重度訪問介護を利用することが認められている。

まとめ

今回の報酬改定では、グループホームにおける支援の質の向上と、支援内容に応じた公平な報酬体系の整備が強化されています。

特に、重度障害者の受け入れ体制を強化するため、基本報酬や加算制度が見直され、支援の実態に合わせた評価が行われるようになった点が注目されます。

これにより、支援内容に応じた適切な報酬が確保され、グループホームで提供される介護サービスの質の向上が期待されます。

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