R6障害福祉サービス報酬改定 ~短期入所~ 医療的ケアの体制の充実等

今回は、医療的ケアに関する報酬改定の一環として、短期入所サービスに焦点を当て、これまでに指摘されてきた課題や、それに伴う改善点について、整理してまいります。

医療的ケア児者を取り巻く短期入所の課題

医療的ケアが必要な子どもや成人を抱える家庭においては、家族のレスパイト(休息)の時間を確保することが、非常に重要な課題となっています。

そのため、これまで、短期入所サービスに対しては以下のような対策が講じられてきました。

・看護職員が福祉型短期入所事業所(※1)を訪問し、必要な看護を提供する取り組みに対する評価の充実

・福祉型強化短期入所サービス(※2)の創設

・医療型短期入所サービス費(※3)の基本報酬の引き上げや日中活動を実施している場合における評価の拡充

(※1)福祉型短期入所サービス・・・在宅で生活している障害児者が、介護者が病気になったりした際に施設に短期間入所して入浴排せつ等の支援を行う短期入所サービス

(※2)福祉型強化短期入所サービス・・・福祉型短期入所の機能を強化したサービスで、経管栄養など医療的ケアが必要な方を支援する短期入所サービス

(※3)医療型短期入所サービス・・・常時医療的ケアが必要な重度の障害者や障害児を対象として、入浴排せつのほか、医療的ケアの提供まで行う短期入所サービス

しかしながら、いまだ医療的ケア児者の受け入れ体制は十分に改善されていないという指摘がなされてきました。

特に、入浴支援を行うことが可能な施設の不足が指摘されており、家族の負担が依然として大きい状況が続いていると言われております。

ご家族の方々は、医療体制が整っている施設で、入浴支援を含めた質の高い支援を望んでおり、そのご家族の安心と信頼を支えるために、今回の報酬改定で以下の見直しが行われることになりました。

福祉型強化短期入所サービス費における日中支援サービス類型

「福祉型強化短期入所の日中支援サービス」という、この新しい類型は、医療的ケアを必要とする利用者に対して、看護職員を常勤で1人以上配置している指定短期入所事業所が、入浴支援を含む日中に限定した支援を行った場合に適用されます。

以下はその具体的な報酬額です。

≪【Ⅰ】福祉型強化特定短期入所サービス費(Ⅰ)(障害者向け)≫

単位数

区分6:1,107単位/日

区分5:977単位/日

区分4:846単位/日

区分3:784単位/日

区分1および区分2:715単位/日

≪【Ⅱ】福祉型強化特定短期入所サービス費(Ⅱ)(障害児向け)≫

単位数

区分3:977単位/日

区分2:816単位/日

区分1:715単位/日

医療的ケア児者の受入体制の拡充

≪医療的ケア対応支援加算【新設】≫

また、医療的ケアを必要とする障害児や障害者、又は障害支援区分5・6の障害者を受け入れる福祉型短期入所サービスに対し、その体制を評価するために「医療的ケア対応支援加算」が新設されました。

この加算は、以下の要件を満たした場合に適用されます。

単位数

120単位/日

福祉型短期入所サービス費を算定している指定短期入所事業所において、看護職員を必要な人数以上に配置し、医療的ケア児者に対して短期入所を実施した場合に、1日につき、所定単位数を加算するものです。

≪重度障害児・障害者対応支援加算【新設】≫

さらに、重度障害児者の受け入れに対応するため、「重度障害児・障害者対応支援加算」が新設されました。

単位数

30単位/日

この加算は、区分5、区分6、または障害児支援区分3に該当する利用者の割合が、事業所の利用者全体の50%以上である場合に加算できます。

今回の報酬改定を通じて、医療的ケアを必要とする児者や重度障害者を受け入れる福祉施設に対する支援が充実しました。

これにより、今後はより多くの施設が医療的ケア児者を受け入れる体制を整え、家族にとっても安心して利用できるサービスが広がることが期待されています。

医療型短期入所における受け入れ支援の強化

次に、利用を希望する医療的ケア児者がサービスを利用する前に、職員の事前訪問などでその手技を確認する取り組みが評価され、新たな加算が創設されました。

医療型短期入所サービスを利用する医療的ケア児者に対して、事前に自宅へ訪問し、必要な医療的ケアの手技を確認することは非常に重要です。

この手技確認を踏まえた上で新たに受け入れを行った場合、今回新設された「医療型短期入所受入前支援加算」が適用されます。

この加算は、医療的ケアを伴う短期入所における事前準備が評価されるもので、2つの類型があります。

≪医療型短期入所受入前支援加算(Ⅰ)≫

職員が利用前日までに利用希望者の自宅へ訪問し、医療的ケアの手技を確認した上で入所を開始した場合に、1日あたり1,000単位を加算。

≪医療型短期入所受入前支援加算(Ⅱ)≫

職員が利用前日までにテレビ電話などの遠隔手段を活用して手技確認を行った場合に、1日あたり500単位を加算。

加算の具体的な要件

加算(Ⅰ)では、指定短期入所事業所の職員が、医療的ケア児者の自宅を訪問し、入所前にケアの手技を確認することが条件となっています。

この訪問は、入所前日までに行う必要があり、その後、短期入所を開始した日について加算が適用されます。

加算(Ⅱ)では、直接訪問は行わず、テレビ電話などのリモート手段を活用し、同様に手技確認を行います。

こちらも入所前日までに確認が行われ、その後、短期入所を開始した日について加算が適用されます。

加算の意義

この「医療型短期入所受入前支援加算」によって、利用前の事前準備がしっかりと行われ、医療的ケアが必要な児者やその家族が安心して短期入所を利用できる体制が整います。

特に、訪問や遠隔確認により、事前に入所施設とのコミュニケーションが図られ、ケアの質を高めることができます。

これにより、施設側も安心して受け入れができ、家族の負担軽減や本人の安全確保につながることが期待されています。

最後に

今回の報酬改定は、医療的ケア児者に対するより充実したサポート体制を確立するための重要なステップです。こうした取り組みが進むことで、医療的ケアを必要とする方々のQOL(生活の質)向上に貢献するでしょう。

                  ↓

    社会保険労務士・行政書士事務所 ワンストップサービス北海道