R6年度 障害福祉サービス報酬改定 ~障害の重度化、高齢化の課題(居宅介護、重度訪問介護の同行支援サービスの見直し)~

障害者の高齢化、障害の重度化が新たな課題となる中、障害のある方が地域で暮らし続けるため、訪問系サービスの役割がますます重要になってきております。

今回の報酬改定では、障害者の高齢化、重度化に伴う地域生活上の課題解決のため、居宅介護、重度訪問介護の同行支援についてサービスの見直しが行われました。

1 通院等介助等の対象要件の見直し(居宅介護)

居宅介護の通院等介助等について、居宅が始点又は終点となる場合には、これまで認められてこなかった、障害福祉サービスの通所系の事業所や地域活動支援センター等から病院に通う(通院等介助等)ことが、新たに認められることになりました(同一の事業所が行うことが条件)。

 [現 行]

以下の移動介助を行った場合に、所定単位数を算定する。

・病院への通院等

・官公署での公的手続

・障害福祉サービスを受けるための相談

[見直し後]

以下の移動介助を行った場合に、所定単位数を算定する。

・病院への通院等

・官公署での公的手続

・障害福祉サービスを受けるための相談

加えて、目的地が複数あって居宅が始点又は終点となる場合には、以下の通所系事業所から病院等への移動等に係る通院等介助及び通院等乗降介助に関しても、同一の指定居宅介護事業所が行うことを条件に、算定することができるものとする。(拡充)

(通所系事業所とは)生活介護、短期入所、自立訓練(機能訓練・生活訓練)、就労移行支援、就労継続支援A型・B型、児童発達支援、放課後等デイサービス、地域活動支援センター、地域生活支援事業の生活訓練等、日中一時支援

これにより、例えば通所サービス施設からの帰りに直接、病院に向かうことができるようになり、これまでのように、いったん家に帰ってから通院等介助を使うといった手間がかからなくなります。

2 熟練従業者による同行支援の見直し(重度訪問介護)

(同行支援とは)

重度の障害者(区分6)が新任の従業員から重度訪問介護サービスを受ける場合に意思疎通や適切な体位変換などの必要なサービス提供が十分に受けられないことがないよう、利用者への支援に熟練した重度訪問介護従業者が同行してサービスの提供を行うこと。

(報酬算定)

熟練従業者と新任従業者それぞれにつき、所定単位数の85%(合わせて170%)の報酬が算定できる。

これまでの上記同行支援の取り扱いに対しては、

・熟練した従業者が支援に同行しているのに報酬設定が低い。

・重度訪問介護加算対象者(15%加算対象者)については特に専門的な支援技術が必要なため、この専門的な技術を習得するために熟練従業者が同行する場合について、報酬で評価すべきではないか。

という意見が出されておりました。このことから、同行支援について報酬上の見直しが行われるとともに、医療的ケア等の専門的な支援技術が必要な重度訪問介護の対象者(15%加算対象者)に対する支援について、初めて従事する従業者も、熟練従業者の同行支援の対象とされることになりました。

【現行】

・ 障害支援区分6の利用者に対し、指定重度訪問介護事業所が新規に採用した従業者により支援が行われる場合

⇒当該利用者の支援に熟練した従業者が同行して支援を行った場合に、それぞれの従業者が行う重度訪問介護につき、所定単位数の100 分の85に相当する単位数を算定する(合わせて170%)。※所要時間120 時間以内

【見直し後】

・ 障害支援区分6の利用者に対し、指定重度訪問介護事業所が新規に採用した従業者により支援が行われる場合

⇒当該利用者の支援に熟練した従業者が同行して支援を行った場合に、それぞれの従業者が行う重度訪問介護につき、所定単位数の100 分の90 に相当する単位数を算定する(合わせて180%)。※所要時間120 時間以内

・ 指定重度訪問介護事業所に勤務する従業者が、重度訪問介護加算対象者(15%加算対象者)に対する支援に初めて従事し支援が行われる場合←新規に採用した従業者限定ではないことに注意。

⇒当該利用者の支援に熟練した従業者が同行して支援を行った場合に、それぞれの従業者が行う重度訪問介護につき、所定単位数の100 分の90 に相当する単位数を算定する。※所要時間120 時間以内

熟練従業者の同行支援に対する報酬が見直され、評価が向上しました。併せて、15%加算対象の重度障害者に対して初めて支援を行う従業者も同行支援の対象とされたことから、従業員の専門的な技術を習得する機会の強化、重度障害者に対する専門的支援の充実が図られております。

VOL.1

上記サービスについて、これまでに公表されたQ&Aをご紹介します。

(2)重度訪問介護

(熟練した重度訪問介護従業者による同行支援について)

問 25 新任従業者に対する熟練従業者の同行支援において、報酬算定上、新任従業者と熟練従業者のそれぞれが所定単位数の 100 分の 90 に相当する単位数となっているが、事業所が従業者に実際に支払う給与においては、事業所の判断により、新任従業者 100 分の 80、熟練従業者は 100 分の 100 にしてもよいか。

(答)

貴見のとおり。

報酬告示は、事業所に支払われる報酬の算定を定めているものであり、事業所が実際に従業者に支払う給与等の算定を定めているものでない。

VOL.2

(1)重度訪問介護

(熟練従業者による同行支援)

問 18 勤務する重度訪問介護事業所において、これまで重度障害者等包括支援の度合にある利用者(A利用者)を支援してきたが、別の重度障害者等包括支援の度合にある利用者(B利用者)に初めて従事する場合、熟練従業者による同行支援の報酬の対象となるか。

(答)

対象とならない。

重度訪問介護事業所に勤務する従業者が、当該事業所において初めて重度障害者等包括支援の度合にある利用者(重度訪問介護加算対象者(15%加算対象者))の支援に従事する場合が対象であり、当該事業所での2人目以降の支援は対象とならない。

これらの報酬改定により、訪問系サービスの質の向上が図られ、障害者の高齢化や障害の重度化に柔軟に対応するための取り組みが進められました。Q&Aも含めて新たな報酬制度に適応して、サービス提供に反映していくことが重要です。

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