
生活介護の報酬改定に関する議論の中で、看護職員を手厚く配置した場合に評価される常勤看護職員等配置加算や、手厚い人員配置体制に対する人員配置体制加算が行われている一方で、社会福祉士などの資格を持つ職員に関する福祉専門職員配置等加算(Ⅰ)・(Ⅱ)と、勤続年数による評価が行われる加算(Ⅲ)について併給ができないなど、資格保有者の勤続年数が考慮されていないなどの意見が出されておりました。
また、財政制度分科会において、生活介護では非常勤職員や勤続年数が短い職員を雇用し、給与費を低く抑えている事業所が存在することから、「サービスの質を適切に評価する報酬体系に見直すべきだ」という指摘も上がっていました。この議論を受けてR6年度報酬改定では以下の通り大幅な見直しが行われております。その内容について、複数回に分けてご紹介します。
基本報酬区分の見直し(サービス提供時間ごと・利用定員規模ごとの基本報酬の設定)
これまで基本報酬は、利用定員に基づき障害程度区分ごとに設定されておりましたが、これを利用者一人ひとりのサービス提供実態に応じたものにするため、障害支援区分や利用定員規模に加え、サービス提供時間ごとに細やかな報酬体系を設けることに改定されました。
なお、医療的ケアが必要な方や盲ろう者など、障害特性により短時間しか利用できない方に対しては、個別支援計画に定められた標準的な支援時間に基づいて報酬が算定されるよう配慮がなされます。
また、従業員の配置員数を計算する際には、サービス提供時間を考慮し、5時間以上7時間未満の利用者は1日あたり0.75人、5時間未満の利用者は0.5人として計算することが可能となります。午前と午後で短時間利用者を分けて受け入れることも可能となります。
利用定員規模ごとの基本報酬の設定に伴い、利用者数の変動に柔軟に対応できるようにすることで、小規模事業所の運営がしやすくなることが見込まれております。
これに加え、障害者支援施設から地域への移行を促進するために、障害者支援施設と同様、利用定員ごとに基本報酬を10人単位で設定します。また、重症心身障害児者対応の多機能型事業所についても配慮した利用定員規模別の報酬体系が設けられました。
具体的には、以下のように、サービス提供時間ごと、利用定員規模ごとに報酬が設定されます。
※利用定員○名以上○名以下 (単位数は略)
サービス提供時間 | 区分6 | 区分5 | 区分4 | 区分3 | 区分2以下 |
3時間未満 | |||||
3時間以上~4時間未満 | |||||
4時間以上~5時間未満 | |||||
5時間以上~6時間未満 | |||||
6時間以上~7時間未満 | |||||
7時間以上~8時間未満 | |||||
8時間以上~9時間未満 |
福祉専門職員配置等加算の見直しについて
生活介護における福祉専門職員配置等加算の算定方法が見直されることになりました。常勤職員が多く配置されていることや、常勤職員の勤続年数が長いことを適切に評価するため、今後は「福祉専門職員配置等加算(Ⅰ)・(Ⅱ)」と「福祉専門職員配置等加算(Ⅲ)」の併給が可能となります。これにより、常勤職員の配置や勤続年数がより適切に評価されることが期待されます。
延長支援加算の見直し
延長支援加算についても見直しが行われます。家族の送迎が仕事の都合で遅くなるなど延長支援が求められる場面が多くありましたが、人員体制上の問題があり、十分に応じられておりませんでした。今回の改定で、基本報酬のサービス提供時間が8時間以上9時間未満で設定されることから、9時間以上の支援を評価対象とする新しい体系が導入されることになりました。なお、施設入所者に関しては、延長支援加算は算定できません。
≪延長支援加算の見直し≫
[現 行]
(1)延長時間1時間未満の場合 61単位/日
(2)延長時間1時間以上の場合 92単位/日
↓
[見直し後]
(1)所要時間9時間以上10時間未満の場合 100単位/日
(2)所要時間10時間以上11時間未満の場合 200単位/日
(3)所要時間11時間以上12時間未満の場合 300単位/日
(4)所要時間12時間以上 400単位/日
以下、これまで公表されたQ&Aを抜粋してご紹介します。
Q&A VOL.1
(生活介護のサービス提供時間の取扱い①)
問 26 平日の営業時間が9時~16 時(7時間)の事業所において、土日祝日の営業時間を平日と異なり9時~12 時(3時間)と短時間としている場合、平日と同様に、サービス提供時間を7時間として算定して良いか。
(答)
土日祝日において、運営規定に定める営業時間を、平日より短時間としている場合には、現にサービスを提供した時間(この場合においては3時間)で報酬を算定すること。
なお、営業時間を超えてサービスを提供した場合には、この限りではない。
(生活介護のサービス提供時間の取扱い②)
問 27 留意事項通知⑹②㈠ウに関して、障害特性等に起因するやむを得ない理由により利用時間が短時間となる場合の特例の対象者については、例示されている医療的ケアが必要な者、重症心身障害者、強度行動障害を有する者、盲ろう者に限られるのか。
(答)
限られるものではない。例えば、重度の身体障害や精神障害等に起因するやむを得ない理由により、短時間となる場合も考えられることから、市町村において、利用者の状態等を勘案し判断されたい。
(生活介護のサービス提供時間の取扱い③)
問 28 留意事項通知⑹②㈠ウに関して、「日々のサービス利用前の受け入れのための準備やサービス利用後における翌日の受け入れのための申し送り事項の整理、主治医への伝達事項の整理などに長時間を要する」場合については、実際に要した時間を、令和6年4月当初には見込むことが困難と考えられるが、前月の支援状況等を基に、おおよその見込みで所要時間を計算しても差し支えないか。
(答)
差し支えない。なお、生活介護計画の見直しの際には、支援実績等を勘案して見直しを行うこと。
(生活介護のサービス提供時間の取扱い④)
問 29 生活介護計画における標準的なサービス提供時間については、送迎や障害特性等による配慮事項に該当する者の場合、どのように記載するのか。
(答)
標準的なサービス提供時間については、送迎や障害特性等による配慮事項に該当する者の場合、例えば、以下のように、合計のサービス提供時間とその内訳がわかるように記載すること。
(イメージ)
・サービス提供時間 4時間
・送迎に係る配慮 1時間
・障害特性に係る配慮 30 分
・送迎時の移乗等 30 分
———————————-
合計のサービス提供時間 6時間
(人員配置体制加算の取り扱い①)
問 30 令和6年4月時点において、人員配置体制加算算定の際、前年度の利14
用者の数の平均値はどのように計算するのか。
(答)
例えば、以下のとおり計算されたい。
(例)
・Aさんのサービス提供時間 → 平均6時間(3月の実績)
・Bさんのサービス提供時間 → 平均7時間(聞き取りによる見込み)
・Cさんのサービス提供時間 → 平均6時間(3月の実績+配慮事項を勘案)
→2人×0.75+1人×1=2.5 人
(人員配置体制加算の取り扱い②)
問 31 人員配置体制加算については、多機能型事業所の場合、前年度の利用者の数の平均値は生活介護のみの利用者の数のみを勘案すれば良いか。
(答)
貴見のとおり。ただし、利用定員については、多機能型事業所全体の定員数とする。
Q&A VOL.2
(生活介護における個別支援計画の記載方法)
問 21 生活介護サービス費の基本報酬については、個別支援計画における標準的な時間に基づき算定することとなったが、個別支援計画にどのように記載すればよいか。
(答)
生活介護においては、別添の個別支援計画書参考様式を参考に、個別支援計画を作成する。
個別支援計画には、実際のサービス提供時間に加え、生活介護の配慮規定(※)に該当する時間を加えた合計の時間を支援の標準的な提供時間等の欄に記載されたい。
※ 生活介護の配慮規定とは以下のこと
○ 利用者が必要とするサービスを提供する事業所が当該利用者の居住する地域にない場合等であって、送迎に要する時間が往復3時間以上となる場合は、1時間を生活介護計画に位置付ける標準的な時間として加えることができる。
○ 医療的ケアスコアに該当する者、重症心身障害者、行動関連項目の合計点数が 10 点以上である者、盲ろう者等であって、障害特性等に起因するやむを得ない理由により、利用時間が短時間(サービス提供時間が6時間未満)にならざるを得ない利用者については、日々のサービス利用前の受け入れのための準備やサービス利用後における翌日の受け入れのための申し送り事項の整理、主治医への伝達事項の整理などに長時間を要すると見込まれることから、これらに実際に要した時間を、1日2時間以内を限度として生活介護計画に位置付ける標準的な時間として加えることができる。
○ 送迎時に実施した居宅内での介助等(着替え、ベッド・車椅子への移乗、戸締り等)に要する時間は、生活介護計画に位置付けた上で、1日1時間以内を限度として、生活介護計画に位置付ける標準的な時間として加えることができる。
(生活介護における実績記録票の記載方法)
問 22 生活介護サービス費の基本報酬については、生活介護の配慮規定に該当する時間も含め個別支援計画における支援の標準的な提供時間等の欄に記載し、その標準的な時間で報酬を算定することとなったが、実績記録票にはどのように記載すればよいか。
(答)
生活介護サービス提供実績記録票においては、従来どおり開始時間及び終了時間は実際のサービス提供時間を記載する。なお、令和6年度障害福祉サービス等報酬改定に伴い新たに「算定時間数」を入力する欄を設けたところであるが、この欄には、生活介護の配慮規定に該当する時間も含め個別支援計画における支援の標準的な提供時間等の欄に記載した標準的な時間を記載することとなる。
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