
令和6年度の障害者総合支援法に基づく報酬改定では、地域生活支援拠点の機能強化に関する新たな加算が導入されました。これにより、地域で暮らす障害者や、地域移行を目指す障害者に対する支援体制が一層強化されます。今回、3つの加算が新設されるとともに、一部の加算で見直しがされており、各支援の充実が期待されています。
1. 地域生活支援拠点コーディネーター加算の新設
まず、新設されたのは、地域生活支援拠点における「拠点コーディネーター」を配置した場合の加算です。拠点コーディネーターは、地域の障害者に対する緊急対応や地域移行支援を行う役割を担います。
地域生活支援拠点等機能強化加算(新設)
500単位/月
対象となる事業者は2種類あり、
ひとつは、
①計画相談支援、自立生活援助、地域移行支援などを一体的に運営する事業所で、地域生活支援拠点として位置づけられている相談支援事業所
ふたつめとして、
②計画相談支援及び障害児相談支援、自立生活援助、地域移行支援などの複数の事業者が、相互に連携して運営されており、地域生活支援拠点等としての役割を果たす事業者(例:基幹相談支援センター)となっております。
算定要件は、
常勤で1名以上の拠点コーディネーターを配置することとされております。
コーディネーターの役割は、地域における連携体制の構築です。市町村や基幹相談支援センター、複数法人との連携を円滑に行い、緊急時や地域移行支援に対するニーズを把握し、支援体制を整えることが求められます。また、コーディネーター1名あたりの対応件数の上限は、1ヶ月あたり100件までとされています。
2. 緊急時受入加算の新設
次に、緊急時に障害者を受け入れる通所系サービス事業所に対する加算が新設されました。これは、障害の特性に起因する緊急事態に対応するための夜間支援が対象となります。
緊急時受入加算(新設)
100単位/日
対象事業者は、地域生活拠点に位置づけられ、関係機関との連携を担う職員を配置している通所系事業所となり、生活介護、自立訓練、就労支援事業者などとなっております。
障害者の特性による緊急対応が行われた際に加算されるため、対応の記録や事前の情報共有が重要となります。これにより、緊急時の迅速な支援が期待されます。
3. 既存の加算要件の見直し
最後に、地域生活支援拠点等に係る既存の加算要件が見直されました。これにより、関係機関との連携を担う職員の配置が新たな条件として追加されました。
例:居宅介護の緊急時対応加算
地域生活拠点に位置づけられている場合に加え、さらに「関係機関との連携調整を担う職員」を配置している場合に限り、1回につき50単位の加算が追加されます。
これらの見直しは、地域に住む障害者や地域移行を希望する方への支援を強化するためのものです。地域での連携体制を一層充実させ、支援が行き届く仕組みづくりが進められています。
まとめ
今回の報酬改定では、障害者の重度化・高齢化や親亡き後を見据えた、地域生活拠点の役割がさらに重要視されております。これにより、地域での生活支援がより効果的かつ迅速に行われ、障害者の地域移行や緊急時対応が円滑に進むことが期待されます。これからも、現場での連携と役割分担を深めながら、支援体制のさらなる向上が求められます。
以下は、これらの加算に関するQ&Aを確認していきます。
Q&A VOL.1
問2
通所系サービスにおいて、「夜間に支援を行った」とは具体的にどのような場合を指すのか。例えば、通所系サービス事業所の職員が、緊急時に利用者の自宅を訪問して支援を実施した場合は、算定対象となるのか。
(答)
「夜間に支援を行った」とは、当該事業所において、日中の支援に引き続き夜間に支援を実施した場合である。
このため、通所系サービス事業所の職員が、緊急時に利用者の自宅を訪問して支援を実施した場合は、算定できない。
問3
市町村が当該事業所を地域生活支援拠点等として位置付けるに当たっては、当該事業所から市町村に対する届出等の提出及び市町村から事業者に対する通知等により確認することとなった。
令和6年4月1日以降については、当該手続きが完了するまで地域生活支援拠点等として位置付けられていないものとして取り扱うこととなるのか。
また、これまでの取扱いにより令和6年4月1日時点で既に地域生活支援拠点等として位置付けられている事業所において、当該手続きを行う必要があるか。
(回答)
・令和6年4月1日以降については、当該手続きが完了するまで地域生活支援拠点等として位置付けられていないものとして取り扱うこととなる。
・令和6年4月1日時点で市町村から地域生活支援拠点等と位置付けられている事業所であっても、改めて下記通知で示す手順を経ることを基本とする。
下記通知とは・・・「地域生活支援拠点等の整備の推進及び機能強化について」(令和6年3月 29 日障障発 0329 第1号厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部障害福祉課長通知)
↓通知で示す手順(抜粋)↓
“6 障害福祉サービス事業所等を地域生活支援拠点等に位置付ける際の手順
市町村が障害福祉サービス事業所等を地域生活支援拠点等に位置付けるに当たっては、以下の手順を経ることを基本とし、単に事業所から地域生活支援拠点等であることを運営規程に規定する旨の届出があったことのみをもって加算を算定することは認められないものであること。
(1)事前協議
地域生活支援拠点等の整備主体である市町村と当該事業所の管理者等を含む関係者との間で、以下の項目等について事前協議し、当該加算を活用した整備の方向性を共有。
・ 地域生活支援拠点等の整備状況の確認と整備促進における課題等
・ 実際に支援を行う場合の連携方法等
・ 整備状況の公表に係る周知方法等
さらに、拠点機能強化事業所の場合には、
・ 拠点コーディネーターの業務と役割、配置人数等
・ 拠点コーディネーターを担う人材及び加算算定事業所の確認、特に複数の事業所が相互に連携して運営する場合には、それぞれの事業所の算定回数の目安及び拠点コーディネーターの人件費等の負担割合等
・ 連携会議の開催方法等
について、その他の地域生活支援拠点等に係る加算の届出に際しては、
・ 拠点関係機関との連携担当者(計画相談支援及び障害児相談支援を除く。) についても事前協議を行うこと。
(2)市町村への届出
事前協議により市町村との合意形成が図られた障害福祉サービス事業者等については、都道府県知事に対する加算の届出に先立ち、市町村に対して、地域生活支援拠点等の機能を担うこと及びそれに係る加算を算定するために必要な届出を行う。
(3)市町村からの通知
市町村は提出された届出書を確認し、内容に不備等がない場合には、当該事業所を地域生活支援拠点等に位置付けた旨の通知を行う。”
問4 地域生活支援拠点等機能強化加算が新設され、当該加算において「地域生活支援拠点等として位置付けられていること」が要件とされるが、地域生活支援拠点の位置付けは、各市町村において定めることでよいか。
(答)
地域生活支援拠点の位置付けについては、上記課長通知でお示しする手順を経ることを基本する。
単に事業所から地域生活支援拠点等であることを運営規程に規定する旨の届出があったことのみをもって加算を算定することは認められない。
←つまり、市町村と事前調整し、連携方法等について協議した上で、市町村への届出、市町村からの通知が必要ということです。(ブログ主)
(地域生活支援拠点等機能強化加算③)
問5 拠点コーディネーターを地域の中核的な相談支援事業所等で共同して配置する場合、拠点コーディネーターを配置していない事業所、拠点コーディネーターを派遣していない事業所も加算の対象となるのか。
(答)
市町村から地域生活支援拠点等の拠点機能強化事業所と位置付けられた事業所にあっては、貴見のとおり。なお、地域生活支援拠点の位置付けについては、上記課長通知6でお示しする手順を経ることを基本とする。
(地域生活支援拠点等機能強化加算④)
問6 地域生活支援拠点等機能強化加算について、拠点コーディネーターを0.5 人×2の常勤換算方法で1名で配置している場合は算定可能か。
(答)
拠点コーディネーターを常勤で1名以上配置することを要件としていることから、御指摘の場合には算定できない。
(地域生活支援拠点等機能強化加算⑤)
問7 複数の自治体が共同で地域生活支援拠点等を整備している場合でも算定可能か。
(答)
市町村から地域生活支援拠点等の拠点機能強化事業所と位置付けられた事業所にあっては、貴見のとおり。なお、地域生活支援拠点の位置付けについては、上記課長通知6でお示しする手順を経ることを基本とする。
←地域生活拠点の位置付けについて、かなり念を入れているようです(ブログ主)
なお、Q&A VOL.3でも4つほど紹介されております。以下お示しします。
Q&A VOL.3
問1 拠点コーディネーターは、支援の連携体制を構築するための業務に専ら従事する必要があることから、原則として、拠点機能強化事業所等における他の職務に従事してはならないが、市町村が特に必要と認める場合に従事できる拠点機能強化事業所の業務(※)とは、具体的にどのようなものが想定されているのか。
(ブログ主)
下記通知の記述に関する質問のようです。
地域生活支援拠点等の整備の推進及び機能強化について(令和6年3月29日障障発第0329第1号厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部障害福祉課長通知)
(略)
5 地域生活支援拠点等の機能強化に係る財政支援について
(略)
(1)地域生活支援拠点等機能強化加算
① 概要
(略)
・ さらに、当該事業所(以下「拠点機能強化事業所」という。)を市町村が地域生活支援拠点等として位置づけていること。
拠点コーディネーターは、(略)原則として、拠点機能強化事業所等における他の職務に従事してはならないこと。ただし、緊急事態における支援や地域移行等に係る支援など、拠点コーディネーターが自ら支援を提供することについて市町村が特に必要と認めた場合には、拠点機能強化事業所の他の職務に従事することができる。
(答)
利用者の障害の特性に起因して生じた緊急的な支援や地域移行等に係る支援など、拠点コーディネーターが自ら支援を提供することについて市町村が特に必要と認めた場合が想定されている。
このため、相談支援専門員が継続的に行うモニタリング等の業務は対象とならない。
問2 拠点コーディネーターが、人員基準上において、拠点機能強化事業所等で兼務できる職務はあるか。
(答)
拠点コーディネーターの業務上支障がない場合は、管理者との兼務は可能である。
問3 当該加算の算定について、例えば A 市から地域生活支援拠点等と位置付けられた相談支援事業所が算定する場合、算定対象となるのは、重度の障害者や A 市の住民に限定される等の要件はあるか。
(答)
対象者の要件はない。
問4 計画相談支援のモニタリングと自立生活援助等、一人の利用者に同月で2回算定する場合があるが、当該加算も同月で一人の利用者に2回算定することは可能か。
(答)
貴見のとおり。
以上が地域生活支援拠点等の加算に係るこれまでのQ&Aの紹介です。
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