就業規則における競業避止義務の重要性 ~モデル就業規則第16条を踏まえて~

競業避止義務とは?

「競業避止義務」とは、従業員が企業の利益に反する競業行為(=営業上の競争)を行わないように従業員に課する義務です。従業員が在職中に得た知識やノウハウを、企業の競合に利用することを防ぐための重要なルールとなります。

企業にとって「営業情報の漏洩防止」は重大な課題です。しかし、モデル就業規則には具体的な競業避止義務に関する規定が設けられていません。

そこで、どのように競業避止義務を就業規則に取り入れるべきか、そのポイントについて解説していきます。

競業避止義務が就業規則で重要な理由

就業規則には、競業避止義務を明記することが必要です。従業員への啓発のほか、万が一、競業避止義務に違反した場合に懲戒処分や損害賠償請求を行うための根拠となります。

在職中の従業員に対する競業避止義務

在職中の従業員は当然ながら競業避止義務を負いますが、懲戒や損害賠償請求の対象となるため、その根拠となる就業規則にしっかりと明記しておくことが重要です。

退職後の従業員に対する競業避止義務と憲法との関係

退職後の競業避止義務に関しては、少し複雑な問題があります。憲法では職業選択の自由が認められており、退職後に競業を制限することは憲法違反になる可能性があります。しかし、営業秘密やノウハウの漏洩リスクを防ぐため、一定の条件下で退職後も競業を禁止する規定が一般的に行われております。

競業避止義務の合理性を判断する基準

競業避止義務が退職者に対して適用されるかどうかは、判例上、主に以下の点をもとに合理性が判断されております。

・競業避止義務の目的の正当性

・制限の対象となる職種や業種

・制限期間

・制限される地域

・代償措置の有無やその内容

判例に見る競業避止義務の具体例

実際の判例では、例えば塾の講師が退職後に担当していた教室の半径2キロ以内での競業を禁止した規定が合理的とされたケースがあります。生徒の引き抜きを防ぐためには合理的な地理的制限と判断されたと思われます。

また、企業の幹部職員の場合は、企業の営業方針やノウハウが守られることを目的として、退職後に地域を限定せずに競業を禁止した規定が有効とされた例もあります。

制限期間と地域の設定

退職者への競業避止義務の制限期間は、おおむね2年程度が有効とされています。地域については、従業員の職種や地位、業務内容に応じて、企業の商圏内など具体的に設定することが重要です。

従業員個別の誓約書の取得の重要性

競業避止義務は、退職した従業員の職種や地位、業務内容に応じて課すべき内容が異なる場合がありますので、就業規則に記載するだけでなく、従業員ごとに個別の誓約書を取得することが推奨されます。特に退職後の競業行為を防ぐためには、このような書面による同意が非常に有効です。

就業規則と誓約書の関係

個別に誓約書を取得するためには、その根拠を就業規則に明記しておく必要があります。具体的に、「競業避止義務に関する誓約書の提出義務」を規定しておくことが、法的なリスクを軽減するポイントとなります。

まとめ

競業避止義務は企業の営業の利益を守るための重要な規定です。特に、退職後における競業避止義務の取り扱いは慎重に検討し、合理的な範囲で規定することが必要です。就業規則に明記するだけでなく、従業員ごとに誓約書を取得することで、リスクを最小限に抑えることができます。

企業の守るべき情報を保護するためにも、競業避止義務の重要性を再確認し、適切な対策を講じましょう。

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