
今回は、モデル就業規則の第10条、第11条の内容とその留意点について解説していきます。
まず、モデル就業規則の第10条、第11条とその付属解説をご紹介します。
☆モデル就業規則「第10条 服務」、「第11条 遵守事項」と「付属解説」
(服務)
第10条 労働者は、職務上の責任を自覚し、誠実に職務を遂行するとともに、会社の指示命令に従い、職務能率の向上及び職場秩序の維持に努めなければならない。
(遵守事項)
第11条 労働者は、以下の事項を守らなければならない。
① 許可なく職務以外の目的で会社の施設、物品等を使用しないこと。
② 職務に関連して自己の利益を図り、又は他より不当に金品を借用し、若しくは贈与を受ける等不正な行為を行わないこと。
③ 勤務中は職務に専念し、正当な理由なく勤務場所を離れないこと。
④ 会社の名誉や信用を損なう行為をしないこと。
⑤ 在職中及び退職後においても、業務上知り得た会社、取引先等の機密を漏洩しないこと。
⑥ 酒気を帯びて就業しないこと。
⑦ その他労働者としてふさわしくない行為をしないこと
=付属解説=
【第10条 服務】
【第11条 遵守事項】
服務規律及び遵守事項については、就業規則に必ず定めなければならない事項ではありませんが、職場の秩序維持に大きな役割を果たすことから、会社にとって労働者に遵守させたい事項を定めてください。
その他留意点
服務に関する就業規則を作成するに当たって、上記「モデル条文や付属解説」以外で注意すべき点をご紹介します。
・服務規律とは、勤務に服するに際して守るべきルールのことです。
・労働者は、労務提供義務に付随して、
①就業時間中は職務に専念し、他の活動は行わないこと、
②就業時間中は企業の正当な利益を侵害してはならないこと、
③企業の施設内では使用者の定める施設管理に関する規則に従うこと、
などの義務を負うものとされています。
・服務規律に違反する行為は就業規則違反となり、制裁事由にも該当することになります。労務トラブルの予防にもなりますので、できる限り具体的に、わかりやすく規定するべきです。
・モデル条文以外の具体の規定例としては、以下のものがあります。
○ソーシャルネットワークサービスを利用して、会社に関する事項を書き込まないこと
○電子メールで私的な内容のやりとりをしないこと
○会社の施設内において、政治、宗教活動又は放送、宣伝等の行為を行わないこと
○職場における口論、けんか等で風紀や秩序を乱さないこと
○勤務中に業務に関係のないインターネットなどを閲覧しないこと
○許可なく、会社に帰属する物品、帳簿、資料の持ち出しをしないこと
○業務以外でコピーを使用しないこと
○業務上の失敗やクレームを隠蔽せず、報告すること
等々があります。各企業の業種や風土、特徴に合わせてできるだけ具体的に規定することが大切です。
・セクシャルハラスメントやパワーハラスメントなどについては別規定を設け、詳細に定める場合があります。モデル就業規則では第12条~第15条でハラスメントの禁止について規定されております。
・なお、勤務中の私用メールについて、就業規則等に特段の定めがない限り、業務執行の支障とならず、使用者に過度の経済的負担をかけなければ一定限度での私用メールは職務専念義務違反にならないとした判例があります。
まとめ
服務規律や遵守事項は、労働者と企業双方の利益を守るため、具体的かつ明確に定めることが望まれます。これにより、労務トラブルを未然に防ぎ、健全な職場環境を維持することが可能です。
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