
今回は、介護保険施設におけるリハビリテーション、口腔、栄養の一体的取組の推進を取り上げます。
現状と課題
介護保険施設におけるリハビリテーション、口腔、栄養の一体的取組の現状と課題は以下のとおりとなっております。
(評価の状況)
・介護老人保健施設での口腔ケアについては、歯科衛生士が介入した場合、「口腔衛生管理加算」として評価され、栄養管理に関しては、管理栄養士が配置された場合の栄養ケアに対し「栄養マネジメント強化加算」があります。
・また、リハビリテーションに関しては、基本報酬の要件としてリハビリテーションマネジメントの実施が求められており、LIFE(生活機能向上支援ツール)への提出やフィードバックの活用も加算の評価対象となっているところです。
・その上で、これらの取組が一体化することで、「入所者の新たな課題やニーズを早期に把握できるようになった」、「職種間の情報連携が増えた」という声が報告されておりました。
(加算の算定状況)
・その一方で、各加算の算定状況は以下の通りとなっております。
口腔衛生管理加算Ⅰ: 9.8%
口腔衛生管理加算Ⅱ: 21.0%
栄養マネジメント強化加算: 36.8%
リハビリテーションマネジメント計画書情報加算: 56.7%
いずれの加算も必ずしも高いとは言えず、特に口腔衛生管理加算Ⅰに関しては10%を下回るという低い状況になっております。
この状況を踏まえ、リハビリテーション計画について、リハビリスタッフ、歯科衛生士、管理栄養士間で一体的に共有する仕組みの検討が進められ、以下の通り見直されることになりました。
介護保険施設におけるリハ、口腔、栄養の一体的取組の推進の取り組み
リハビリテーション・機能訓練、口腔、栄養を一体的に推進するため、
・介護老人保健施設におけるリハビリテーションマネジメント計画書情報加算
・介護老人福祉施設における個別機能訓練加算(Ⅱ)
について、以下のア~ウを条件に、新たな評価区分を設けられることになりました。
ア 口腔衛生管理加算(Ⅱ)及び栄養マネジメント強化加算を算定していること
リハビリテーションや機能訓練と合わせて、口腔ケアと栄養管理も重要な要素として評価されています。この二つの加算が取得されていることが前提条件です。
イ リハビリテーション・機能訓練、口腔、栄養の情報を関係職種間で一体的に共有すること
リハビリテーション実施計画や個別機能訓練計画の情報を、関係職種(医師、歯科衛生士、管理栄養士、理学療法士など)の間で共有し、効果的なケアを実施することが求められます。必要に応じて、LIFE(生活機能向上支援ツール)への提出情報を活用し、データに基づいた計画の見直しが促されます。
ウ 計画の見直しとフィードバックの実施
共有された情報を基に、リハビリテーション計画や個別機能訓練計画の見直しを行い、その内容を関係職種に対してフィードバックすることが重要となります。
以下が見直された具体的な内容です。加算別にご紹介します。※介護医療院は略
リハビリテーションマネジメント計画書情報加算の見直し
【介護老人保健施設】
単位数
<現行>
リハビリテーションマネジメント計画書情報加算 33単位/月
↓
<改定後>
リハビリテーションマネジメント計画書情報加算(Ⅰ) 53単位/月 (新設)
リハビリテーションマネジメント計画書情報加算(Ⅱ) 33単位/月
※加算(Ⅰ)、(Ⅱ)は併算定不可
算定要件
<リハビリテーションマネジメント計画書情報加算(Ⅰ)>(新設)
○ リハビリテーション計画書の情報提出と活用
入所者ごとのリハビリテーション計画書に基づく情報を、厚生労働省に提出することが求められています。また、リハビリテーションの実施にあたっては、必要に応じて計画内容を見直し、その情報を活用して適切かつ有効なリハビリを行うことが求められています。
○ 口腔衛生管理加算(Ⅱ)および栄養マネジメント強化加算の取得
施設内で口腔ケアと栄養管理がしっかりと行われていることを示すために、口腔衛生管理加算(Ⅱ)および栄養マネジメント強化加算を算定していることが要件となっています。
○ 多職種による情報の共有
各入所者のリハビリテーション計画の内容や、口腔の健康状態、栄養状態に関する情報を、医師、管理栄養士、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、歯科衛生士、看護職員、介護職員など、多職種が一体となって共有することが求められます。
○ 計画の見直しとフィードバック
情報共有を基に、リハビリテーション計画の必要な見直しが行われ、その見直し内容を関係職種間で共有することが必要です。
個別機能訓練加算の見直し
【介護老人福祉施設、地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護】
単位数
<現行>
個別機能訓練加算(Ⅰ) 12単位/日
個別機能訓練加算(Ⅱ) 20単位/月
↓
<改定後>
個別機能訓練加算(Ⅰ) 12単位/日 (変更なし)
個別機能訓練加算(Ⅱ) 20単位/月 (変更なし)
個別機能訓練加算(Ⅲ) 20単位/月 (新設)
※加算(Ⅰ)、(Ⅱ)、(Ⅲ)は併算定可
算定要件
○個別機能訓練加算(Ⅱ)の算定
まず、施設は個別機能訓練加算(Ⅱ)を取得していることが前提です。これは、各入所者に対して個別の機能訓練が適切に実施されていることを評価するものです。
○口腔衛生管理加算(Ⅱ)および栄養マネジメント強化加算の取得
加えて、口腔衛生管理加算(Ⅱ)および栄養マネジメント強化加算を算定していることが要件となっています。
○情報の共有と計画の見直し
入所者ごとに、理学療法士やその他の専門職が、個別機能訓練計画の内容や、入所者の口腔の健康状態、栄養状態に関する情報を相互に共有することが求められます。
また、共有した情報に基づき、必要に応じて個別機能訓練計画の見直しを行い、その内容を理学療法士などの関係職種間で共有することが重要です。
○一体的計画書の見直し
リハビリテーションや機能訓練、口腔ケア、栄養管理に関連する一体的な計画書の記載項目が整理され、他の様式におけるLIFE提出項目を踏まえた様式に見直されます。
まとめ
今回の見直しは、介護老人保健施設、介護老人福祉施設におけるリハビリテーション、口腔ケア、栄養管理の一体的な取り組みを強化する重要なステップです。
職種ごとの専門性を活かしながら、連携したケアが推進されることが期待されます。施設全体でのケアの質の向上と入所者に対する包括的で適切なケアが一層推進されることが見込まれます。
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