令和7年度概算要求における「賃上げ支援」のための助成金について

令和7年度の概算要求で、各企業が賃上げに取り組むための支援策として、厚生労働省がいくつかの助成金を財務省に要求しています。

概算要求とは?

概算要求は、各省庁が翌年度に取り組みたい事業や必要な予算を財務省に提出する手続きです。この要求をもとに、年末に予算案が決定されます。今回ご紹介する助成金も、その一部として要求されているものです。

現時点では「要求」段階であり、まだ予算として確定しているものではありません。

今後、厚生労働省が財務省と交渉していく中で予算化されていきますが、現時点での厚生労働省の考え方を知ることができますので、参考にしてみてください。

以下、太字部分がR7の要求における拡充部分となります。

1 生産性向上への支援助成金

(1)業務改善助成金【22億円】

企業が事業場内の最低賃金を一定額以上引き上げ、生産性向上に役立つ設備投資などを行った場合、その費用の一部を助成します。

ポイント: 地域間格差に配慮した助成率の再編や、支援時期の見直しの重点化

(2)働き方改革推進支援助成金【70億円】

労働時間削減や業務効率化のために、外部専門家によるコンサルティングや労働能率向上に資する設備導入を行い、成果を上げた企業に助成します。

ポイント: 現行の賃上げ率(3%、5%)に加えて、7%の場合の助成を強化

(3)人材開発支援助成金【620億円】

職務に関連した専門的な知識や技能を習得する職業訓練を実施した場合、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部が助成されます。

ポイント: 訓練後に賃上げを行った場合における賃金助成額の引き上げ(賃金上昇率を踏まえた賃金助成額のベースアップの一環として実施)

(4)人材確保等支援助成金(雇用管理制度助成コース)【4億円】

賃金規定や人事評価制度の改善について、労働協約・就業規則を作成・変更することにより導入し、離職率を低下させた企業に対して助成が行われます。

ポイント: 雇用管理制度助成コースを令和7年度から再開する際、人事評価改善等助成コース(※)を統合の上、賃上げ(5%)を実現した場合の加算を導入

(※)人事評価制度を整備、年功のみによらない賃金制度を設ける事業主への助成

2 正規・非正規の格差是正への支援

(1)キャリアアップ助成金(正社員化コース・賃金規定等改定コース)【633億円】

①非正規労働者を正社員に転換し、従前よりも3%以上の賃上げを行った企業に助成が行われます。(正社員化コース)

②非正規雇用労働者の基本給を賃金規定の改定により3%以上増額し、適用した場合も助成対象となります。(賃金規定等改定コース)

ポイント: 賃金規定等改定コースについて、賃上げ率の区分を新たに設定し(2区分→4区分、賃上げ率6%以上の場合はさらに引き上げ)、新たな昇給制度を設けた場合の加算措置が導入されます。

3 より高い処遇への労働移動支援

(1)早期再就職支援等助成金(雇入れ支援コース、中途採用拡大コース)【35億円】

●事業規模の縮小などによって離職を余儀なくされた労働者について、離職後3か月以内に、その労働者を無期雇用(期間の定めがない雇用)として再雇用し、さらに再雇用前の賃金と比較して5%以上の賃上げを行った場合に助成されます。

●中途採用者の雇用管理制度を整備した上で、以下のいずれかを満たした場合に助成されます。

・中途採用率を一定以上向上させた場合

・中途採用率を一定以上向上させ、そのうち45歳以上の中途採用者の割合を一定以上拡大させ、さらにその全員に対して雇入れ時の賃金を、雇い入れ前と比して5%以上上昇させた場合

(2)特定求職者雇用開発助成金(成長分野等人材確保・育成コース)【137億円】

就労経験のない職業に就くことを希望する、就職が困難な人材を対象として、企業がそのような人を雇い入れた際、人材育成計画を策定し、雇入れから3年以内に5%以上の賃金引上げを行った場合に、助成されます。

(3)産業雇用安定助成金【27億円】

企業が労働者のスキルアップを在籍型出向により行い、労働者が出向先から復帰した際、もしくは出向開始から1年後などに、その労働者の賃金を出向前より5%以上上昇させた場合、出向中の賃金の一部助が助成されます。

まとめ

以上が、令和7年度の賃上げ支援助成金の概要です。

これらの助成金は、単に賃上げや生産性向上だけでなく、働き方改革や人材育成、正規・非正規の格差是正、労働移動の支援など、幅広いテーマにわたるサポートを提供しています。

企業がこれらの助成金を活用することで、従業員の待遇改善や労働環境の整備が進み、企業全体の成長につながることが期待されます。

年末から年明けにかけて予算の決定が進む中で、賃上げや労働環境改善を目指す企業は、今からしっかり準備を整え、これらの制度を積極的に活用していくことが重要です。

引き続き、予算の動向に注目し、助成金の詳細が発表され次第、適切なタイミングでの対応を検討してみてください。

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