ハケンのルール②

派遣先会社にはどのような責任があるのか?

派遣社員は、あくまで派遣元会社と雇用契約を結んでおり、「使用者」は派遣元です。そのため、労働契約の締結や賃金の支払い、有給休暇の管理といった基本的な労務管理は、原則として派遣元会社の責任とされています。

しかし、実際に業務を指示し、就業場所や作業の手順、休憩のタイミングなど、日々の働き方を管理するのは派遣先会社です。そこで労働基準法をはじめとする労働者保護法制では、派遣先会社にも一定の責任が課せられています。

たとえば、労働時間や休憩、休日の管理は、派遣社員と派遣元会社との労働契約で定められるものの、その実際の運用は派遣先会社が担います。

派遣先会社が時間外労働を命じる場合には、派遣元会社が締結・届出している労使協定(いわゆる36協定)の範囲内で命じなければならず、派遣先会社はその限度を超えて命じることはできません。

派遣社員に変形労働時間制を適用する場合も、派遣元が設定した内容に従う必要があります。

また、割増賃金の支払いは派遣元が行うものの、その計算に必要な始業・終業時刻などの勤怠情報は、派遣社員が実際に働いている派遣先が、月に1回以上、派遣元に通知しなければなりません。

年次有給休暇や産休・育休・介護休業の制度運用も派遣元が担います。有給休暇の取得時期を変更する「時季変更権」も派遣元にしか認められておらず、派遣先はその判断に関与できません。

そのため、派遣社員が年次有給休暇を取得した場合、その日については、派遣元会社が別の派遣社員を手配しなければなりません。

なお、妊産婦の時間外労働の制限や生理休暇、育児時間の確保など、実際の就業中に関わる内容は、派遣先の責任となります。

さらに、定期健康診断は使用者である派遣元会社の義務ですが、有害業務に対する特殊健康診断は、該当する作業を管理する派遣先が実施する必要があります。

派遣先で労働災害が発生した場合でも、使用者である派遣元が補償責任を負いますが、派遣先においても労働者への安全配慮義務が求められていることから、派遣元にも派遣先にも死傷病報告の提出が求められています。

派遣社員に対する法的な保護は、派遣元と派遣先の両者に、役割を分担しながら適用されており、派遣先会社としての責任を正しく理解し適切に対応することが、安全で円滑な派遣就業のために必要です。

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