
今回は、(看護)小規模多機能型居宅介護における認知症加算の見直しについてご紹介します。
(看護)小規模多機能型居宅介護に認知症対応力の強化が求められる背景
小規模多機能型居宅介護の利用者における認知症高齢者の割合は増加傾向にあり、認知症が進行して重度化すると、多くの方が施設や居住系サービスに移行するのが現状です。このような背景から、小規模多機能型居宅介護においても認知症対応力を強化する必要があると認識されておりました。
特に、(看護)小規模多機能型居宅介護においては、「訪問」サービスの利用者では要介護3の方が最も多いものの、「訪問看護」に関しては要介護5の方が最も多い傾向にあること、また、「泊まり」や「通い」のサービス利用も、介護度が高くなるほど増加している点が考慮されています。
認知症加算の見直し内容
単位数
<現行>
認知症加算(Ⅰ):800単位/月
認知症加算(Ⅱ):500単位/月
↓
<見直し後>
認知症加算(Ⅰ):920単位/月(新設)
認知症加算(Ⅱ):890単位/月(新設)
認知症加算(Ⅲ):760単位/月(変更)
認知症加算(Ⅳ):460単位/月(変更)
新しい算定要件の詳細
今回の報酬改定に伴い、算定要件も新しく設定されました。特に、認知症ケアに対する専門的なスキルを持った人材の配置や、指導・研修の実施が求められています。
認知症加算(Ⅰ)(新設)
・認知症介護実践リーダー研修等を修了した者を認知症高齢者の日常生活自立度Ⅲ以上の方が20人未満の場合は1名以上、20人以上の場合は1に、当該対象者の数が19を超えて10又は端数を増すごとに1を加えて得た数以上配置
←具体例で言うと以下のとおりのはず・・・(ブログ主)
19人以下の場合:1名以上配置
20~29人の場合:1名 + 1名(20人を超えた分で1名追加) = 計2名
30~39人の場合:1名 + 2名(20人を超えた分で2名追加) = 計3名
※下記Q&AVOL.1問26参照
・認知症高齢者の日常生活自立度Ⅲ以上の方に対して専門的な認知症ケアを実施
・従業員に対して定期的に認知症ケアの指導・技術的な会議を開催
・認知症介護指導者研修修了者を1名以上配置し、事業所全体の認知症ケアを指導
・介護職員や看護職員のための認知症ケア研修計画を作成し、実施または実施予定
認知症加算(Ⅱ)(新設)
・認知症介護実践リーダー研修等修了者を配置
・認知症高齢者の日常生活自立度Ⅲ以上の方が20人未満の場合は1名以上、20人以上の場合は1に、当該対象者の数が19を超えて10又は端数を増すごとに1を加えて得た数以上
・配置認知症高齢者の日常生活自立度Ⅲ以上の方に対して専門的な認知症ケアを実施
・定期的に従業員向けに認知症ケアの留意事項や技術指導に関する会議を開催
認知症加算(Ⅲ)(変更)(現行のⅠと同じ)
・認知症高齢者の日常生活自立度Ⅲ以上の方に対して、(看護)小規模多機能型居宅介護を提供
認知症加算(Ⅳ)(変更)(現行のⅠと同じ)
・要介護2であり、認知症高齢者の日常生活自立度Ⅱに該当する方に対して、(看護)小規模多機能型居宅介護を提供
まとめ
看護小規模多機能型居宅介護は、地域包括ケアの中心的な役割を担う拠点です。地域の認知症高齢者を積極的に受け入れることで、地域資源と連携しつつ、質の高いケアを提供することが求められています。また、人材育成の面でも、今回の改定は大きな期待が寄せられています。
以下、これまでに公表された令和6年度認知症加算に関するQ&Aを抜粋してご紹介します。
Q&A VOL.1
問 17 認知症専門ケア加算及び通所介護、地域密着型通所介護における認知症加算並びに(看護)小規模多機能型居宅介護における認知症加算(Ⅰ)・(Ⅱ)の算定要件について、「認知症介護に係る専門的な研修」や「認知症介護の指導に係る専門的な研修」のうち、認知症看護に係る適切な研修とは、どのようなものがあるか。
(答)
・ 現時点では、以下のいずれかの研修である。
① 日本看護協会認定看護師教育課程「認知症看護」の研修
② 日本看護協会が認定している看護系大学院の「老人看護」及び「精神看護」の専門看護師教育課程
③ 日本精神科看護協会が認定している「精神科認定看護師」
・ ただし、③については認定証が発行されている者に限る。
問 18 認知症高齢者の日常生活自立度の確認方法如何。
(答)
・ 認知症高齢者の日常生活自立度の決定に当たっては、医師の判定結果又は主治医意見書を用いて、居宅サービス計画又は各サービスの計画に記載することとなる。なお、複数の判定結果がある場合には、最も新しい判定を用いる。
・ 医師の判定が無い場合は、「要介護認定等の実施について」に基づき、認定調査員が記入した同通知中「2(4)認定調査員」に規定する「認定調査票」の「認定調査票(基本調査)」7の「認知症高齢者の日常生活自立度」欄の記載を用いるものとする。
・ これらについて、介護支援専門員はサービス担当者会議などを通じて、認知症高齢者の日常生活自立度も含めて情報を共有することとなる。
問 19 認知症介護に係る専門的な研修を修了した者を配置するとあるが、「配置」の考
え方如何。常勤要件等はあるか。
(答)
・ 専門的な研修を修了した者の配置については、常勤等の条件は無いが、認知症チームケアや認知症介護に関する研修の実施など、本加算制度の要件を満たすためには事業所内での業務を実施する必要があることから、加算対象事業所の職員であることが必要である。
・ なお、本加算制度の対象となる事業所は、専門的な研修を修了した者の勤務する主たる事業所1か所のみである。
問 20 認知症専門ケア加算(Ⅱ)及び(看護)小規模多機能型居宅介護における認知症加算(Ⅰ)の認知症介護指導者は、研修修了者であれば管理者でもかまわないか。
(答)
認知症介護指導者研修修了者であり、適切に事業所全体の認知症ケアの実施等を行っている場合であれば、その者の職務や資格等については問わない。
問 21 認知症介護実践リーダー研修を修了していないが、都道府県等が当該研修修了者と同等の能力を有すると認めた者であって、認知症介護指導者養成研修を修了した者について、認知症専門ケア加算及び通所介護、地域密着型通所介護における認知症加算並びに(看護)小規模多機能型居宅介護における認知症加算(Ⅰ)・(Ⅱ)における認知症介護実践リーダー研修修了者としてみなすことはできないか。
(答)
・ 認知症介護指導者養成研修については認知症介護実践研修(認知症介護実践者研修及び認知症介護実践リーダー研修)の企画・立案に参加し、又は講師として従事することが予定されている者であることがその受講要件にあり、平成 20 年度までに行われたカリキュラムにおいては認知症介護実践リーダー研修の内容が全て含まれていたこと等の経過を踏まえ、認知症介護実践リーダー研修が未受講であっても当該研修を修了したものとみなすこととする。
・ 従って、認知症専門ケア加算(Ⅱ)及び(看護)小規模多機能型居宅介護における認知症加算(Ⅱ)については、加算対象となる者が 20 名未満の場合にあっては、平成 20 年度以前の認知症介護指導者養成研修を修了した者(認知症介護実践リーダー研修の未受講者)1 名の配置で算定できることとし、通所介護、地域密着型通所介護における認知症加算については、当該者を指定通所介護を行う時間帯を通じて1名の配置で算定できることとなる。
問 22 例えば、平成 18 年度より全国社会福祉協議会が認定し、日本介護福祉士会等が実施する「介護福祉士ファーストステップ研修」については、認知症介護実践リーダー研修相当として認められるか。
(答)
本加算制度の対象となる認知症介護実践リーダー研修については、自治体が実施又は
指定する研修としており、研修カリキュラム、講師等を審査し、適当と判断された場合には認められる。
問 23 認知症介護実践リーダー研修修了者は、「痴呆介護研修事業の実施について」(平成 12 年9月5日老発第 623 号)及び「痴呆介護研修事業の円滑な運営について」(平成 12 年 10 月 25 日老計第 43 号)において規定する専門課程を修了した者も含むのか。
(答)
含むものとする。
問 24 認知症専門ケア加算及び通所介護、地域密着型通所介護における認知症加算並びに(看護)小規模多機能型居宅介護における認知症加算(Ⅰ)・(Ⅱ)における「技術的指導に係る会議」と、特定事業所加算やサービス提供体制強化加算における「事業所における従業者の技術指導を目的とした会議」が同時期に開催される場合であって、当該会議の検討内容の1つが、認知症ケアの技術的指導についての事項で、当該会議に登録ヘルパーを含めた全ての訪問介護員等や全ての従業者が参加した場合、両会議を開催したものと考えてよいのか。
(答)
貴見のとおりである。
問 26 認知症専門ケア加算(Ⅱ)及び(看護)小規模多機能型居宅介護における認知症加算(Ⅰ)を算定するためには、認知症専門ケア加算(Ⅰ)及び(看護)小規模多機能型居宅介護における認知症加算(Ⅱ)の算定要件の一つである認知症介護実践リーダー研修修了者に加えて、認知症介護指導者養成研修修了者又は認知症看護に係る適切な研修修了者を別に配置する必要があるのか。
(答)
必要ない。例えば加算の対象者が 20 名未満の場合、
・ 認知症介護実践リーダー研修と認知症介護指導者養成研修の両方を修了した者
・ 認知症看護に係る適切な研修を修了した者
のいずれかが1名配置されていれば、算定することができる。
(研修修了者の人員配置例)
加算対象者数 | ||||||
~19 | 20~29 | 30~39 | ||||
必要な研修修了者の配置数 | 「認知症介護に係る専門的な研修」 | 1 | 2 | 3 | ・・・ | |
認知症介護実践リーダー研修 | ||||||
認知症看護に係る適切な研修 | ||||||
「認知症介護の指導に係る専門的な研修」 | 1 | 1 | 1 | ・・・ | ||
認知症介護指導者養成研修 | ||||||
認知症看護に係る適切な研修 |
(注)認知症介護実践リーダー研修と認知症介護指導者養成研修の両方を修了した者、又は認知症看護に係る適切な研修を修了した者を1名配置する場合、「認知症介護に係る専門的な研修」及び「認知症介護の指導に係る専門的な研修」の修了者をそれぞれ1名配置したことになる。
Q&A VOL.3
問4 「認知症介護実践リーダー研修の研修対象者として、介護保険施設・事業所等にお
いてサービスを利用者に直接提供する介護職員として、介護福祉士資格を取得した
日から起算して 10 年以上、かつ、1,800 日以上の実務経験を有する者あるいはそれ
と同等以上の能力を有する者であると実施主体の長が認めた者については、令和9
年3月 31 日までの間は、本文の規定に関わらず研修対象者」とあるが、「それと同
等以上の能力を有する者であると実施主体の長が認めた者」とは具体的にどのよう
な者なのか。
(答)
同等以上の能力を有する者として、例えば、訪問介護事業所において介護福祉士として7
年以上サービスを利用者に直接提供するとともに、そのうちの3年以上、サービス提供責任者としても従事する者を研修対象者として認めていただくことは差し支えない。
3 介護給付費算定に係る体制等に関する届出において、認知症加算の項目が「1なし 2加算Ⅰ 3加算Ⅱ」となっているが、加算(Ⅲ)(Ⅳ)の届出はどうすればよいか。
(答)
今回の改定で新設した認知症加算(Ⅰ)(Ⅱ)は、事業所の体制を要件とする区分であるため届出を必要とするものであるが、認知症加算(Ⅲ)(Ⅳ)は従来の認知症加算(Ⅰ)(Ⅱ)と同様、事業所の体制を要件としない区分であることから届出不要。
↓