
今回は、モデル就業規則第19条のモデル条文とその付属解説を紹介し、その他留意点について解説していきます。
☆モデル就業規則
1日の労働時間を8時間とし、完全週休2日制を採用する場合の規程例です。
(労働時間及び休憩時間)
第19条 労働時間は、1週間については40時間、1日については8時間とする。 2 始業・終業の時刻及び休憩時間は、次のとおりとする。ただし、業務の都合その他やむを得ない事情により、これらを繰り上げ、又は繰り下げることがある。この場合、 前日までに労働者に通知する。
- 一般勤務
始業・終業時刻 | 休憩時間 |
始業 午前 時 分 | 時 分から 時 分まで |
終業 午後 時 分 |
- 交替勤務
- 1番(日勤)
始業・終業時刻 | 休憩時間 |
始業 午前 時 分 | 時 分から 時 分まで |
終業 午後 時 分 |
- 2番(準夜勤)
始業・終業時刻 | 休憩時間 |
始業 午前 時 分 | 時 分から 時 分まで |
終業 午後 時 分 |
- 3番(夜勤)
始業・終業時刻 | 休憩時間 |
始業 午前 時 分 | 時 分から 時 分まで |
終業 午後 時 分 |
3 交替勤務における各労働者の勤務は、別に定めるシフト表により、前月の○日までに各労働者に通知する。
4 交替勤務における就業番は原則として○日ごとに○番を○番に、○番を○番に、○ 番を○番に転換する。
5 一般勤務から交替勤務へ、交替勤務から一般勤務への勤務形態の変更は、原則として休日又は非番明けに行うものとし、前月の○日前までに が労働者に通知する。
付属解説【第19条 労働時間及び休憩時間】
1 始業及び終業の時刻、休憩時間は、就業規則に必ず定めておかなければなりません。また、交替勤務をとる場合は、勤務形態ごとの始業・終業時刻及び休憩時間を規定するとともに、就業番の転換についても就業規則に規定してください。
2 休憩は、原則として事業場すべての労働者に一斉に与えなければなりませんが、本規程例のように交替勤務を採用する等一斉に与えることが困難な場合には、労働者代表との書面による協定(以下「労使協定」といいます。)を結ぶことにより交替で与えることができます(労基法第34条第2項)。この場合、一斉に休憩を与えない労働者の範囲及び当該労働者に対する休憩の与え方について、労使協定で定めなければなりません(労基則第15条)。
また、一斉休憩付与に対する例外として、労基法第40条に基づき、労基則第31条において、運輸交通業(労基法別表第1第4号)、商業(同第8号)、金融・広告業(同第9号)、映画・演劇業(同第10号)、通信業(同第11号)、保健衛生業(同第13号)、接客娯楽業(同第14号)及び官公署の事業について、一斉に休憩を与えなくてもよい旨が定められています。 労使協定の労働者代表については、本規程例第21条の解説を参照してください。
3 休憩時間は、労働者に自由に利用させなければなりません。使用者の指示があった場合には即時に業務に従事することを求められており、労働から離れることが保障されていない状態で待機等している時間(いわゆる「手待ち時間」)については労働時間に当たり休憩時間ではありませんので注意してください。
☆実際の運用における留意点
上記モデル条文や付属解説に記載されている事項以外にも押さえておく必要がある点についてご説明します。適正な労働環境の整備にお役立てください。
1 労働時間の定義について
まず、労働時間とは「使用者の指揮監督のもとで労働者が労務を提供している実労働時間」を指します。
つまり、単に業務を行っている時間だけではなく、指揮命令下にありいつでも業務に従事できる状態にある「手待ち時間」も労働時間に含まれます。
2 法定労働時間
労働基準法では、週40時間・1日8時間を超える労働は原則として認められていません。
ただし、物品販売業、映画・演劇業、保健衛生業、接客娯楽業などで常時10人未満の労働者を使用する事業所については、週44時間までの労働が認められています。
3 判例に基づく労働時間の考え方
労働時間について、判例では「労働時間とは、指揮命令下に置かれたかどうかにより客観的に決定されるものであり、労働契約や就業規則、労働協約の内容によって左右されるべきではない」とされています。
そのため、例えば、シフトの引き継ぎ時間や電話当番の時間、仮眠時間なども、指揮命令下にあって業務に即対応できる状態であれば労働時間に含まれることがあります。
4 始業・終業時刻および休憩時間の取り扱い
企業側の都合で始業や終業の時刻、休憩時間を繰り上げたり繰り下げたりする場合、就業規則に明記する必要があります。
しかし、これを恣意的に変更することはできず、繰り上げ等変更するには合理的な理由が求められます。
5 休憩時間の取り方
労働時間が6時間を超える場合は少なくとも45分、8時間を超える場合は少なくとも1時間の休憩を与える必要があります。
また、休憩は「労働時間の途中に与えること」、「自由に利用させること」、「一斉に与えること」とされています。
なお、物品販売業、映画・演劇業、保健衛生業、接客娯楽業など一部の業種では、一斉に与える必要はありません。
その他の業種でも労使協定を締結すれば、一斉付与の義務を免除できます。この場合、労使協定の届出は不要です。
まとめ
以上のように、労働時間に関する規定や休憩時間の管理など、就業規則の運用においては注意すべき点が多岐にわたります。
企業としては、法令を遵守しながら、労働者にとって働きやすい環境を整えることが重要です。
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