
今後、急激に増加が予測される認知症高齢者への対応がますます重要視されています。これに伴い、認知症対応力の強化が各種介護サービスにおいて求められております。今回はそのうちの通所介護および地域密着型通所介護における「認知症加算」の見直しについてご紹介します。
通所介護および地域密着型通所介護における認知症加算のこれまでの経緯
平成27年度の介護報酬改定において、認知症高齢者を積極的に受け入れるために「認知症加算」が通所介護および地域密着型通所介護に導入されましたが、導入以降のサービス提供状況をみると、以下のような課題が明らかになりました。
認知症高齢者へのサービス提供の減少
令和に入って以降、認知症状のある高齢者へのサービス提供が減少傾向にあること。
認知症加算の算定状況
加算を受けるためには、日常生活自立度Ⅲ以上の利用者が20%以上である必要がありますが、実際には17~18%程度にとどまっていること。
事業所が加算を算定しない理由
看護職員や介護職員の確保が難しいこと、日常生活自立度Ⅲ以上の利用者割合が20%未満という事業所が多いこと
その他
通所介護事業所の約6割が事業所内で研修会やセミナーを開催しており、4割が個別のカンファレンスやケアの検証を行っていること
改定のポイント:認知症加算の見直し
今回の改定では、通所介護・地域密着型通所介護における「認知症加算」の要件が一部緩和されるほか、事業所全体で認知症高齢者に対応するために、従業者に対して認知症ケアに関する個別事例の検討や技術的指導を行うための会議等を定期的に開催することが新たに求められます。
改定後の要件と単位数
認知症加算単位数:60単位/日(変更なし)
新しい算定要件
・人員基準で配置する人数に加え、看護職員または介護職員を常勤換算で2名以上確保していること。
・認知症高齢者の割合:当該事業所における「前年度」、または「算定日が属する月の前3月間」の利用者の総数のうち、日常生活に支障を来すおそれのある症状・行動が認められることから介護を必要とする認知症の者の占める割合が15%以上であること。(現行の20%から緩和)。
・研修済みの職員配置:通所介護の提供時間中、認知症介護の専門的な研修等を修了した職員を1名以上配置していること。
・定期的な会議の開催(新設):従業者が認知症ケアに関する事例の検討や技術的指導を行うための会議を定期的に開催すること。
まとめ
実態に応じたこの改定を通じて、認知症対応力のさらなる向上と、事業所全体での認知症ケアの強化が期待されます。今後も介護サービスにおいて、認知症高齢者への質の高い支援が提供されることが重要です。
以下、これまでに発出されている通所介護・地域密着型通所介護の認知症加算に係る2024年度介護報酬改定に関するQ&Aを抜粋してご紹介します。
Q&A VOL.1
問 17
認知症専門ケア加算及び通所介護、地域密着型通所介護における認知症加算並びに(看護)小規模多機能型居宅介護における認知症加算(Ⅰ)・(Ⅱ)の算定要件について、「認知症介護に係る専門的な研修」や「認知症介護の指導に係る専門的な研修」のうち、認知症看護に係る適切な研修とは、どのようなものがあるか。
(答)
・ 現時点では、以下のいずれかの研修である。
① 日本看護協会認定看護師教育課程「認知症看護」の研修
② 日本看護協会が認定している看護系大学院の「老人看護」及び「精神看護」の専門看護師教育課程
③ 日本精神科看護協会が認定している「精神科認定看護師」
・ ただし、③については認定証が発行されている者に限る。
問 18
認知症高齢者の日常生活自立度の確認方法如何。
(答)
・ 認知症高齢者の日常生活自立度の決定に当たっては、医師の判定結果又は主治医意見書を用いて、居宅サービス計画又は各サービスの計画に記載することとなる。なお、複数の判定結果がある場合には、最も新しい判定を用いる。
・ 医師の判定が無い場合は、「要介護認定等の実施について」に基づき、認定調査員が記入した同通知中「2(4)認定調査員」に規定する「認定調査票」の「認定調査票(基本調査)」7の「認知症高齢者の日常生活自立度」欄の記載を用いるものとする。
・ これらについて、介護支援専門員はサービス担当者会議などを通じて、認知症高齢者の日常生活自立度も含めて情報を共有することとなる。
問 19
認知症介護に係る専門的な研修を修了した者を配置するとあるが、「配置」の考え方如何。常勤要件等はあるか。
(答)
・ 専門的な研修を修了した者の配置については、常勤等の条件は無いが、認知症チームケアや認知症介護に関する研修の実施など、本加算制度の要件を満たすためには事業所内での業務を実施する必要があることから、加算対象事業所の職員であることが必要である。
・ なお、本加算制度の対象となる事業所は、専門的な研修を修了した者の勤務する主たる事業所1か所のみである。
問 21
認知症介護実践リーダー研修を修了していないが、都道府県等が当該研修修了者と同等の能力を有すると認めた者であって、認知症介護指導者養成研修を修了した者について、認知症専門ケア加算及び通所介護、地域密着型通所介護における認知症加算並びに(看護)小規模多機能型居宅介護における認知症加算(Ⅰ)・(Ⅱ)における認知症介護実践リーダー研修修了者としてみなすことはできないか。
(答)
・ 認知症介護指導者養成研修については認知症介護実践研修(認知症介護実践者研修及び認知症介護実践リーダー研修)の企画・立案に参加し、又は講師として従事することが予定されている者であることがその受講要件にあり、平成 20 年度までに行われたカリキュラムにおいては認知症介護実践リーダー研修の内容が全て含まれていたこと等の経過を踏まえ、認知症介護実践リーダー研修が未受講であっても当該研修を修了したものとみなすこととする。
・ 従って、認知症専門ケア加算(Ⅱ)及び(看護)小規模多機能型居宅介護における認知症加算(Ⅱ)については、加算対象となる者が 20 名未満の場合にあっては、平成 20 年度以前の認知症介護指導者養成研修を修了した者(認知症介護実践リーダー研修の未受講者)1 名の配置で算定できることとし、通所介護、地域密着型通所介護における認知症加算については、当該者を指定通所介護を行う時間帯を通じて1名の配置で算定できることとなる。
問 22
例えば、平成 18 年度より全国社会福祉協議会が認定し、日本介護福祉士会等が実施する「介護福祉士ファーストステップ研修」については、認知症介護実践リーダー研修相当として認められるか。
(答)
本加算制度の対象となる認知症介護実践リーダー研修については、自治体が実施又は指定する研修としており、研修カリキュラム、講師等を審査し、適当と判断された場合には認められる。
問 23
認知症介護実践リーダー研修修了者は、「痴呆介護研修事業の実施について」(平成 12 年9月5日老発第 623 号)及び「痴呆介護研修事業の円滑な運営について」(平成 12 年 10 月 25 日老計第 43 号)において規定する専門課程を修了した者も含むのか。
(答)
含むものとする。
問 24
認知症専門ケア加算及び通所介護、地域密着型通所介護における認知症加算並びに(看護)小規模多機能型居宅介護における認知症加算(Ⅰ)・(Ⅱ)における「技術的指導に係る会議」と、特定事業所加算やサービス提供体制強化加算における「事業所における従業者の技術指導を目的とした会議」が同時期に開催される場合であって、当該会議の検討内容の1つが、認知症ケアの技術的指導についての事項で、当該会議に登録ヘルパーを含めた全ての訪問介護員等や全ての従業者が参加した場合、両会議を開催したものと考えてよいのか。
(答)
貴見のとおりである。
Q&A VOL.3
問4
「認知症介護実践リーダー研修の研修対象者として、介護保険施設・事業所等においてサービスを利用者に直接提供する介護職員として、介護福祉士資格を取得した日から起算して 10 年以上、かつ、1,800 日以上の実務経験を有する者あるいはそれと同等以上の能力を有する者であると実施主体の長が認めた者については、令和9年3月 31 日までの間は、本文の規定に関わらず研修対象者」とあるが、「それと同等以上の能力を有する者であると実施主体の長が認めた者」とは具体的にどのような者なのか。
(答)
同等以上の能力を有する者として、例えば、訪問介護事業所において介護福祉士として7年以上サービスを利用者に直接提供するとともに、そのうちの3年以上、サービス提供責任者としても従事する者を研修対象者として認めていただくことは差し支えない。
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